年明けから北朝鮮が弾道ミサイルの発射実験を繰り返している。あくまで自衛のための軍事力強化だと主張しているが、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の「ミサイル愛」の深さはどこからくるのか? ここに彼の執念と開発の舞台裏を描いた実話小説がある――。 失敗した研究者「最も重い罪背負った」 2012年4月13日早朝のことである。北朝鮮・北西部、東倉里(トンチャンリ)から「光明星3号」1号機が発射された。人工衛星の打ち上げと称していたが、技術的には長距離弾道ミサイルそのものだった。平和利用を印象づけるため、日本を含む海外メディアをわざわざ現地に招き、正恩氏の業績として世界へ速報されるはずだったが、ミサイルは上空150キロまで飛んだものの、爆発し、空中分解する。国家の威信は傷つき、正恩氏のメンツもつぶれた。ところが、その失敗から8カ月後の12月12日、改良型の「光明星3号」2号機の打ち上げに成功するのであ