山形県の小さな町に井上ひさしが蔵書を寄贈した図書館ができたというニュースを知ったのは、いつ頃だっただろうか。 私は小学生で『ブンとフン』を読んでから、この作家に熱中した時期がある。小説も好きだったが、小説家の日常生活が垣間見られるエッセイを愛読した。本に対する偏愛ぶりにも共感した。 75年の生涯で約280冊(共著、編著を含む)を著したこの作家のごく一部にしか接していないが、私も井上ファンのひとりと云えると思う。余談だが、雑誌編集者だったときに井上さんに原稿依頼をしたことがある。電話で一度は引き受けてもらったが、その後「やっぱり忙しくて……」と断られた。 2014年、その図書館〈遅筆堂文庫〉が入っている川西町フレンドリープラザで、「Book! Book! Okitama」(BBO)というブックイベントが開催された。仙台にいたときにそのことを知り、BBOの一箱古本市に出店するという友人に便乗し