アイアムアヒーロー 1 (ビッグコミックス) ■ 【オススメ】 痛いし怖いしどうしよう・・・斜め上そして下から、ぐさりぐさりと 痛みが刺す。 主人公は幻覚が見え独り言も多い35歳男性。ひきこもりというわけではない、不規則な生活にみえるがきちんと外に出る、仕事もある。漫画家のアシスタント。ネームを書き連載への意欲もある。そもそも元は大手出版社で連載を持っていた。単行本化もされている。彼女もいる。とはいえ彼女は元彼の話を毎度し、その才能を褒める。むかつきはするのだがその作品は確かに上手いのだ。彼女は昔は自分のマンガのファンであったのだが。その彼女は優しい。が、酔うと酒乱であったりもする。しかし彼女は、不安の襲うことが多い彼にとっては、天使であり、救いだ。 そんな、痛い毎日が描かれる、その外側で、世間では騒がしく、物騒な事件が起き、各所で暴徒発生というテレビ画面の報道に、主人公は特に気付かず外に

Dの魔王 1 (ビッグコミックス) ■ 【オススメ】 「Ｄ機関」　それはスパイ養成所 生粋の軍人、人を信じる陸軍中尉は大佐の命を受け 情報勤務要員養成所、通称Ｄ機関との連絡係に任じられる。 大佐はそのスパイ養成所を認めず、中尉に求めたのは Ｄ機関の失敗を報告すること。しかし 真面目な彼にとってスパイ養成のＤ機関はまったくもって 理解不能な場所だった。 陸軍中野予備校、いや、陸軍中野学校の元となった後方勤務要員養成所を舞台とした、戦時スパイ物語。「ジョーカー・ゲーム 」が面白いと聞き続編も出たらしいし読もうかなと思っていた矢先に このコミカライズが発売された。 スパイものは面白いわけだが、そこに日本があまりよろしくない状況になっていく昭和10年代、その中で軍部に下に見られているスパイ養成所、しかしその状況で自らどう立ち回るべきかを虎視眈々と考えているＤ機関。率いるものには絶望と希望があり、そ

少年リーダム~友情・努力・勝利の詩 1 (BUNCH COMICS) ■ 【オススメ】 漫画への熱い愛を語る一作。 少年漫画誌の熱い編集部を描く一作。架空の編集部が舞台だが、原案として明記されているように舞台は実際は『少年ジャンプ』、時代も1982年に固定されている。ジャンプが後発ながら王者となり、しかしサンデーに追い上げられている時代。ラブコメに行くべきか行かざるべきかで迷う時代を描いている。 架空の話なのか実際の話なのかが微妙、という落としどころは正直、好きではない。とはいえフィクションとしているので、微妙な話を現実にはなかった設定に落とし込んで描くことができる点で、著者のやれることがきちんとあるのは巧いつくりである。 この時代に漫画に興味のない人物を主人公に設定するのは、舞台であろう集英社にそんな人物が入社試験を受けるはずもなかろうと思うので違和感を覚えるが、まぁ架空の話である、まっ

ラブんラブ 1 (アクションコミックス) ■ 【オススメ】 他人の恋を砂被りで見るのは楽しい！ 元気が取りえな中一少女、朝から韓国ドラマを見て遅刻しそうになるような女の子、愛子はラブ大好きでラブコと呼ばれるが自分の恋には無頓着。そんな彼女に恋がやってくる−と普通の少女マンガなのだが、そうではないのがこのお話。中学では班行動、という絶妙なリアリティある設定を用意し、その班で一緒になった男の子女の子のなかで片道通行の恋が生じていることに彼女は気づく。 恋愛ドラマなんか目じゃない、本物が目の前で展開されている！と盛り上がる彼女。かぶりつきで楽しみ、応援しながらいろいろとちょっかいを出す内容で、鬱々になりがちな著者の作品としては珍しく明るいが、いや、そう見せておいて躁状態な だけでこのあと欝がやってくるんじゃないかとびくびく。それは題材からしてないかもしれないが、陽気でノー天気なヒロインといえども

ノンストップ おヨメ道―独身漫画家・柘植文のマイペース花嫁修業!! ■ 【オススメ】 花嫁修行ここにあり。 旧作ですがご紹介。 著者の新刊がいろいろ出ているので遡ってご紹介。 花嫁修業をする、という設定で あちこちに習いに行く体験エッセイ漫画である。 ブーケからフランスパンと初手から方向性が危うい内容は、 そのまま暴走をし始めるのだった。 それを斜に見つつも諦念して体験する著者、 嬉々として誘導する敏腕編集者。この敏腕ぶりの描き方が素晴らしい。 体験した内容をみていくだけで素晴らしさがわかる。なので列記してみたい。 ・ウエディングブーケ ・フランスパン ・フーレセラピー ・潜入クルーズウエディング ・乗馬 ・着付け ・手紡ぎ手織り ・和菓子 ・建築模型 ・カポエィラ ・児童館で一日先生 ・寿司 ・手品 ・ハープ ・生け花 ・茶道 ・ステンドグラス ・五月人形 ・ゴルフ 飄々としていて素晴ら

シキソー 警視庁第4機動捜査隊 1 (ガンガンコミックスＯＮＬＩＮＥ) ■ 【オススメ】 初動捜査を担当する機動捜査隊、でも主人公が 異動となった先の第４機動捜査隊はちょっと毛色が違う様子で・・・。 「書道」を扱うまんがを紹介した直後に取り上げるのは 「初動」捜査に関する漫画という、まぁこれが同日発売の同レーベルの 作品であるわけだが、漢字を変換しようとしてそんな繋がり（？） に今気がついた。くだらない話はさておき。 犯罪の初動捜査を担当する機動捜査隊、機捜（きそう）。 犯人逮捕までが彼らの仕事。主人公は捜査一課でまじめな働きぶりも 評価されている若手の人材。そんな彼が、第４機動捜査隊、シキソー への配属を命じられる。これに先輩たちは驚き、なんでお前が、 左遷ってわけでもあるまいに、といいつつ慰める。お前は警察を辞める前に 一課に戻ってこいよ、とまで言われて送られた先は、 ちゃらちゃらした

ベルとふたりで 1巻(バンブーコミックス) (バンブー・コミックス) ■ 【オススメ】 犬と少女の暑苦しい日常。犬のありえなさが素晴らしい。 犬と少女の日常生活を綴る４コマ漫画。 この犬が常人離れしていて、っていうか人じゃなくて犬なんだが人のようで、コロッケは好きだわチョコは食いたがるわ直立歩行までするような。 人間の姉妹のような二人を描くコメディスケッチである。 大柄な犬だとなんとなく雄という感じがするが、実はメス。 「動物のお医者さん」 のチョビのようなものか。 ぜんぜん犬らしくない犬なので犬好きが読むタイプの 漫画ではない。ナンセンスな動きをする、 「どう育てたらここまでふてぶてしい犬ができるのかなあ」とまで 言われる犬の様を楽しめるのならオススメ。 頭いいのに主人公と仲のいいアキちゃんが飄々としていてなかなかイイです。 ■続刊購入する？→ 【絶対買う】 【データ】 伊藤黒介 （いと

Star man 1 (マーガレットコミックス) ■ 【オススメ】金のティアラ賞 （賞金５００万円）受賞はダテではない。 両親が長期不在で１７歳の姉と１５歳の弟の二人暮らし、 かなりとっぴな弟に頭を悩ませる姉だったが、 それ以上にとんでもない事態が発生した。弟の貼っていた「星と交信する 印」が、実は宇宙船を引き寄せる力を持っていて、 宇宙人がやってきたのだった。 宇宙船来訪コメディ。別に侵略の意図はない。人がいっぱいで食糧不足で、 それを解決するためにやってきた、というストーリーが一応あり、 これが伏線となっている。展開されるのは異文化を持った宇宙人と、 非常識人である弟とでひっかきまわし、常識人の姉がたいへんな目に遭うという コメディで、定番といえば定番ではある。が、そこに、「 お父さんは心配症 」のような爆発力のある、それまでの展開から暴走したシーンが挿入される。 絵に関してはギャグテ

L DK 1 (講談社コミックスフレンド B) ■ 【オススメ】 著者の作風が好きなので３作連続でオススメです。 学校の王子に対して反感を持つヒロイン。 なぜなら親友が彼に告白してこっぴどく振られたから。 最悪の関係の二人が、ともに一人暮らしで 隣同士の部屋になる。しかもヒロインは彼の素顔を知って 内心惹かれ、彼のほうは周りの女の子たちと違うヒロインに 興味を持つ。 ありきたりな構造の物語、なのだが、 なんだよくあるタイプじゃない、と思わせない仕掛けがある。 それは細部の丁寧さ。ヒロインが恋に不慣れであたふたするのは 定番としても、彼女が一人暮らしする理由が明確で、 かつ大事な親友がヒロインの親友たる行動をとるところも、 ご都合主義というよりもむしろそうだろうねと納得する。 一方で彼の行動が王子様そのものでよくわからず不可解なのだが、 そのあたりは少女マンガが理想とする男子像なのでこれはこ

BILLY BAT 1 (モーニングKC) ■ 【オススメ】 相変わらず大風呂敷を広げます。 古風なアメリカンコミック調のカラー漫画は、 ビリーバットというコウモリ男が主人公の擬人化した動物のハードボイルド。 その冒頭部分は、主人公である日系２世の青年が描く漫画。 彼はその作品でヒット作家となろうとしていたが、 日本帰りの刑事にこのキャラクターは日本で見たぞといわれ、 自身も日本にいたことがあるだけに気になって渡日する。 戦後のオキュパイド・ジャパンで、ＧＨＱの知り合いを頼る主人公。 日本語の出来る彼は通訳翻訳を期待される。そんな中、 彼は歴史的事件にかかわり、社会の裏を覗き見ることになる。 このコンビで講談社というのはちょっとした違和感を覚えるが、しかし作風はモーニングにあう作家なのでこのマッチングは待ってましたとの感もある。下山事件、白洲次郎といった史実や実在人物を交えて、異国で真実を

東京怪童 1 (モーニングKC) ■ 【オススメ】 評価の難しい、というか、２巻を買うかどうか悩みまくってしまう一作。 望月「ミネタロウ」の新作は、脳に問題をもった青少年の治療とケアを目的とする病院が舞台。そこには、事故による損傷で感じたこと思ったこと全てを口にしてしまう青年、疾患が原因で突然オーガズムがやってきてしまう女性、自分以外の人間の存在を認識できない少女、自分を超人だと言う少年、などがいた。 「患者」たちの説明をし彼らを描くことで終始する一巻。その中軸になるのが青年脳科学者、のはずだったのだが、なんだこの展開は。何かが起こっているような、起こっていないような、そんな日々が描かれる。主役の青年は日常にイラついていて最悪だと思い気分は死にたいのにでも絶対に死にたくない、そんな、ある種当たり前の思春期を、しかし彼はそれを胸の奥に押しとどめることができないので全てが言葉となり溢れ出る。小

君の天井は僕の床 1 (クイーンズコミックス) ■ 【オススメ】 デザイン系の事務所をもつ女性、 そしてその隣のビル持ち二代目をめぐる、 ご近所物語。 デザイナーの女性二人が共同で仕事場を借りて２年。 童顔にみえるが老眼鏡が必要で実は40歳を超えているという設定 のヒロインに、その隣人であるビルのオーナーが恋する話に 入っていく40代未婚者のスローな恋愛を中心としたご近所もの。 周囲のひとたちは当然仕事をしているひとたちなわけで、 そのあたりの仕事っぷりを見せてくれるのが面白い。 恋愛は遅々としてすすまないが、そこがオトナのへたれ具合 枯れ具合で、まぁいいじゃないですか、人生長いわけですし。 という気分になれる、30代女性なんかが読んで元気の出る 漫画。ゆるい雰囲気が心地よい。 「 誰も寝てはならぬ 」というかサライネスなんかと通じる空気がある。 帯には読み切りシリーズだの裏表紙にはオムニ

人間失格 1 (BUNCH COMICS) ■ 【オススメ】 現代に舞台を移してのコミカライズは 新鮮に見え魅力もあるが携帯小説なんかに 近い感じもするのはあまりに本質を抉りすぎて しまったからか。 名作、というか著名な作品を、 時代を大胆にアレンジして現代に置き換え 漫画化したものである。 これが案外なじんでいて、すんなりと読める仕上がり になっている。 好かれるように、と道化を演じてきた主人公は 息苦しくなり息抜きの場を求める。 そこでガス抜きできたと思いきや、 逃げてきた親はプレッシャーをかけ、 自力では生きられない彼は追い詰められる。 追い詰められるが彼には女にもてるという 特質があるので逃げる場所がある。 場所があるがゆえにますます彼は袋小路に入り込んでしまう。 話は現代ではあるが、21世紀でもあるのだけれど、 内容的には昭和の香りが漂い、根底にあるものは 変わらない。父親の存在

マコちゃん絵日記 1 (1) (FLOW COMICS) ■ 【オススメ】 掲載誌はエロいけど、 漫画はエロくありません。 ほのぼので大笑いできるおバカ漫画です。 お下がりのＴシャツが素敵。 ちょっとおばかで直情的なところのある小学５年生の 女の子が主人公。まゆげの濃いお兄ちゃん、 ぬいぐるみ作りで生計をたてている父、 パートに出るが毎度クビになる母。 父母はまぁちょっと変だが仲は良いし幸せな家庭である。 お友達は、物静かで小さい弟の面倒を良く見る優等生に、 ちっちゃいがゴージャスな服きて家は裕福も母思いな子。 それとケンカ相手も。 エロくできそうな要素はあって、 実際パンツ脱いだりなんだりもあるが、 そのあたりは描写さえせず、 内容はまったくエロではありません。 著者の叙情性を十分引き出し、 エロもないので 敬遠される要素もなし。 叙情的といっても笑いは要所にあって、 お父さんのつくるぬ

世界の果てで愛ましょう 1 (1) (電撃コミックス) ■ 【オススメ】 主人公は、異世界の王子に見初められ、 実の弟にも愛する気持ちを告白される。 ・・・実は男なんだけどな！読み進めるほど笑えます。 宇宙を支配する世界で兄弟と争い 王位継承権第一位となった王子。 彼がいざ妻を娶ろうとしたとき、 相手はいずれも欲を出したものばかり、 それにうんざりした彼は辺境で嫁探しをする。 そのとき彼を助けたのは、 人がよくしかし地味な主人公。 といっても女顔ではありながら彼はれっきとした 男の子だったのだが・・・無償の愛に触れた 王子は彼を気に入り、薬で女性化させてしまった。 女になった少年が、王子に求愛され、 一方、王子の世界ではなく家に帰りたいと要求すると、 王子はその願いをかなえ、ともに地球に戻ってくる。 家庭では父と弟を説得、しかし弟はもともと兄が大好きで、 しかもその兄が女性になってしまった

獣の奏者 1 (シリウスコミックス) ■ 【オススメ】 誰にも仕えることなく、ただ掟を厳しく守る一族、 その一族から離反した者の娘が、波乱の人生を送る。 闘蛇が戦闘用に飼われている国。そこでその面倒を 見ていたのは主人公の母親。しかし彼女は 霧の民と呼ばれる者の出身。周囲からは 浮いている。そしてある日、大切な 闘蛇を死なせてしまう。ただし、決意を持って、 意図的に。その罪を問われ、処罰される母。 娘はそれを助けようとするが−。 数奇な出自の娘が波乱の人生を送るファンタジー、 その第一巻。真王だの大公だのに仕える者達の国々のなかで、 歴史を知っている民族は誰にも仕えず、かわりに掟を厳しく守って生きている。 その血を継ぐヒロインは、どこにも属さず、属せずに、しかし しっかりと生きていく。 話はまだ冒頭だが、しっかりした物語と、 それをきちんと漫画に定着させる作画家の おかげで、一巻から興味深

ぢごぷり 1 (アフタヌーンKC) ■ 【オススメ】 鬱々育児日記。かなりブルーになる部分もあるが、 これはこれで新鮮な漫画だ。 18歳の姉は赤ちゃんとともに、 退院して双子の妹の待つ家へ。 うんちは漏れ、母乳を２時間ごといやそれより短い間隔で ほしがり、泣きやまない我が子。 子育ての地獄が始まる。 ここまで欝モードをあからさまに描いた 子育てものというのはなかなかない。 敬遠もあるだろうが共感と覚悟を生む 内容だろう、商品をほめるばかりの 広告のようなレビューばかりでは毒にも薬にもならない のと同じで、真実の一端を告げることは必要だろう。 一方、18歳で、苗字もかわっているけれど 父親はどうした、そもそも双子の姉妹の 親はどこに？さらに、なんで赤ちゃんは劇画作家の 描くような不細工な面をしているのか。 と思うが、父親に関しては巻末のほうで 出てきている。一方不細工なおっさん面なのは、 赤

シュガーズ 1 (マーガレットコミックス) ■ 【オススメ】 題名どおり、甘い、甘い、青春恋愛オムニバス。 友達はしょっちゅう告白されているのに、 ヒロインはお子様でそんな話には無縁。 いつもからかわれる男の子が好きになっていて、 でも友達には、あんな恋愛と遠いやつに なんでわざわざほれるかなぁ、と 言われている。そのもてる友達に、 実は、といって媚薬入りのキャンディーなるものを 渡される。効果は一日かぎり。確かに翌日、 彼女はいつもにない経験をする。そして 意中の男の子も。しかし彼女は、それも キャンディーのせいだ、明日になったら そんな効果も消えてしまう、と考えて すげなくする。 高校生の甘い甘い恋のはじまりを描く連作短編集、 一話で話は完結し、別の登場人物の話が 次に展開され、とつながっていく。 よくあるタイプのスタイルだが、 登場人物と話にはさまざまなパターンを用意していて、 少年

ケーキを買いに (Fx COMICS) ■ 【オススメ】 ケーキ屋を中心にした連作短編集。 なのだが、そういう話にしては珍しく、 イイ話でもホラーでもなく、 変態だ。 ええと、なんだこりゃ、という 感じの連作短編集、一巻完結。 表紙絵からエロスっぽいのね、 掲載誌にしては珍しく直球のエロなのね、 というところまでは読み取ったとしても、、 それが明るいヘンタイ話であるとまでは なかなか思わないだろう。 ケーキ屋の女の子に同性の先輩との恋を思い出す中年、 好きなひとに暴力をふるわれたい女性、 クラスのもてる女の子のオナニーを見せられる友人、 同僚の太った女性に嫌悪を抱いていると思っていたらそれが恋心 だと気がついてしまった青年、先輩に恋を告白しそして 翌日チンコ見せろと迫る少女 ・・・すみません、変人ばっかりなんですけど。 そんな、まぁ歪んでいるような、でもなんかみんな朗らかだな という陽気な