『まほろ駅前多田便利軒』(文芸春秋)で直木賞に決まった三浦しをんさん=写真=が、受賞会見で「少女漫画とか、ボーイズラブ小説が好き」と発言していた。「ボーイズラブ(BL)」という言葉がてらいなく堂々と出たことにいささか驚いたが、この言葉、実は今回の受賞作を深読みするための裏キーワードかもしれない。 BLとは、要するに「女性のための、男同士の恋愛を描いた小説、漫画」の総称で、源流は1970年代末の同人誌あたりまでさかのぼる。90年代以後、専門誌やレーベルの増加と共に、出版界にひそやかな、だが確固たるジャンル市場を築いている。 BLは少女漫画の発展型と言えるが、ではなぜ「男同士の恋愛」なのかは、あまりきちんと説明されたことがない。当の女性読者たち(よく“腐女子(ふじょし)”と自称する)が、あまり語りたがらないからだ。 三浦さんは“日陰の花”であるBLを、意識して一般小説に昇華しようとしている作家