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ブックマーク / agora-web.jp (21)

  • 創薬研究アウトソーシングと高学歴ワーキングプア(下) --- 城戸 佳織

    (上)より続く。 <その6> 日の博士号取得者の置かれている状況 日の製薬企業の研究においては、学位による研究者間の序列は、逆に明確ではない。たとえ博士号を持って入社したとしても、最初の数年は上司について丁稚奉公だし、修士や学士号しか持っていなくても(最近は減ったが)昇給が多少遅いだけで同じだ。中国では、修士号取得者の初任給と、博士号取得者の初任給では、倍近い開きがあるが、日では博士号を取った研究者に、給与において今ひとつメリットがない。ドイツのように、最初からプロジェクトを丸ごと任されることもないし、逆に責任を負わされることもない。 会社によっては、ある程度、研究者の意思でテーマを選び、実験できる企業もあるようだ。だが、博士号を持っているから、修士号しかないからと、テーマや実験のレベルに制限はつかない。日では、研究者は学位に関わらず、皆平等に扱われる。日の研究者は、最初は皆実験

    創薬研究アウトソーシングと高学歴ワーキングプア(下) --- 城戸 佳織
  • 創薬研究アウトソーシングと高学歴ワーキングプア(上) --- 城戸 佳織

    <その1> はじめに 私は普段、医薬品研究のアウトソーシングの仕事に関わっている。少なくとも業界では、研究の外注は知られた話だ。だが業界以外の人に話すと、「研究の仕事がアウトソーシングされるなら、世の中に安定な仕事なんて存在しないですね」と、驚きまじりの反応をされることが多い。研究の仕事というのは、とりわけ優秀で、高学歴の、ある意味選ばれた人たちがする性質のもので、そのような人たちは仕事にあぶれたりすることはないと思われているようだ。 確かに医薬品の研究に従事する人たちは、最近特に博士号取得者が多くなりつつある。私が普段仕事で接する人も、5人に4人くらいは博士号取得者だ。普通の人に比べれば、ずっと高学歴には違いない。ただみな優秀なのかは、議論の余地があるだろう。それにたとえ実力があったとしても、研究テーマに恵まれない場合もあるし、上司や同僚と折り合いが悪く、十分に能力を発揮できない場合ある

    創薬研究アウトソーシングと高学歴ワーキングプア(上) --- 城戸 佳織
  • 8年制薬剤師は何のために作られるのか?

    昨年から、日薬学会は、8年制薬剤師を提唱している。 現在の薬学部には2種類ある。4年制と6年制だ。 4年制は研究者養成コース、6年制は薬剤師養成コースという建前になっている。4年制薬学部卒だと、薬剤師にはなれない。しかし、経過措置として、4年制薬学部卒でも、修士2年を修了し、かつ、「補充教育」を2年履修すると、国家試験受験資格が付与され、薬剤師になることができる。 学部4年+修士2年+補充教育2年 = 8年 8年制薬剤師である。 日薬学会会頭柴崎正勝氏は、経過措置でしかなかったこのコースを、今後も継続したいと主張している。 http://magplus.jiho.jp/magplusplus/report/id/364 http://www.pharm.or.jp/whats/kaito.html 理由は、以下である。 1.6年制化により、大学院進学者が激減しているので、薬学会会員の減

    8年制薬剤師は何のために作られるのか?
  • 日本人の国際的コミュニケーション能力

    諸外国の人たちに比べれば十分過ぎると言ってもよい程の学校教育を受けているにも関わらず、同程度の教育を受けた他国人に比べて日人の国際コミュニケーション能力は極めて弱い。これは何故か、どうすれば改善が出来るのかを今回は考えてみたい。 多くの人が「英語力の不足」をその最大の原因として上げるだろうが、それでは、長い間「英語」が必修科目となっている教育を受けながら、何故「英語力の不足」がなおも問題になっているのかを考える必要がある。私も「英語力の不足」は痛感しているが、それは問題の一面に過ぎず、「論理的思考の欠如」や「自己主張の意志と能力の不足」がそれ以上に大きいと考えている。そして、その原因は「英語力の不足」の原因と根を一つにしていると思っている。 先ずは「論理的思考」の重要性について考えたい。「言語や文化が異なる人たちとコミュニケートする時の共通の基盤は実は『論理』である」という事は意外に意識

    日本人の国際的コミュニケーション能力
  • 山本太郎氏当選に思う--噛みしめるべき格言「教育のない民主主義は無意味 : アゴラ - ライブドアブログ

    科学・文化太郎氏当選に思う--噛みしめるべき格言「教育のない民主主義は無意味 科学と理性に背を向けた人を信任 7月21日の参議院選挙は自民党圧勝という結果になった。私は特定政党を支持しないが、自民党の影響力が強まり政治が混迷して、何も決められない状況が終わることは一国民としてうれしい。 ところが残念なことがあった。東京選挙区で反原発を過激に主張する俳優の山太郎氏が当選したことだ。私は原則として選挙での民意を尊重する。しかし山氏は当選するべきではないと考えていた。 偉そうに聞こえたら恐縮だが、私はこの結果に「日社会の敗北」という感想さえ抱いた。そして「悪霊」(意味は後述)が社会を覆った恐怖を感じた。科学的な判断力を養わない教育、有名人に面白がって投票する幼稚な政治文化、理性的な判断をしない情報弱者の多さなど、日で観察される問題の悪しき集大成が、山氏の当選につながっている

  • SFが生み出す未来・伝説的プログラマが目指す仮想現実

    昨年春にMichael Abrash氏が,ウエラブルコンピューティングの研究を始めていることが、米Valveのブログで人により、発表された時には、ゲーム業界では大きな驚きを持って受け止められた。Valveは「Steam」というネット流通の草分けの企業で、パソコン向けの市場では、ほとんど独占的ともいえる強力な立場を築いている。また、「Half-Life2」「Team Fortress 2」「Portal 2」など、次々に傑作ゲームを発表し続け、世界的な有力なゲーム会社の一社でもある。そのソフトウェア中心の企業が、ハードウェアに投資しているという事実が衝撃的だったのだ。 現在開催されている米サンフランシスコのGame Developers Conference(GDC、ゲーム開発者会議)で、初めてどのような研究開発が進められているのかが明らかにされた。完全なバーチャルリアリティ(VR)を実現

    SFが生み出す未来・伝説的プログラマが目指す仮想現実
    motoson
    motoson 2013/03/30
  • 6年制薬科大学はいらない --- 井上 晃宏

    現在のわが国の薬学部は、医療職養成学科という分類になっていながら、内実はまったく職業教育を行っておらず、医薬品を研究する学科でもない。この現実を薬剤師以外の医療職の方たちは知らないと思われる。 自分は医学部と薬学部の両方を卒業している。同経験に基づき、コラムでは、わが国の薬学教育が抱える問題について詳細に論じてみたい。 ■「薬剤師は医薬品を取り扱うための専門職であるが、専門性は形骸化している」 医薬品の取り扱い(ハンドリング)とは、保存と運搬と秤量と混合と包装である。保存に必要な知識とは、保存期限と温度の厳守だけだ。運搬は誰でもできる。秤量も、秤が使えればできる。混合は、一部に無菌調剤が含まれるが、これも、数日も練習すれば誰でもできる。包装に至っては、手先の技術以上のものではない。 19世紀までは、医薬品の取り扱いは簡単ではなかった。大半が、生物原料から抽出される生薬だったため、真贋の鑑

    6年制薬科大学はいらない --- 井上 晃宏
  • 余剰PDの解決はされるのか

    文科省学術分科会、第6期研究費部会が定期的に行われている。会は科研費に関するあり方を議論する場として定期的に行われているものである。その中の第6回の部会議事録を読んだ(4月と少し古い議事録であるが)日経の宮田氏は諸手を挙げてPDの奴隷解放宣言であると論じている(*1)。大まかな点としては基金化の拡大、新学術領域研究の見直し、プロジェクト研究における採用される側のPDの裁量権の拡大、などが議論されている。 その若手研究者に対する緩和について、そこまでのドラスティックな改革であるのかと気になり読み進めてみた。 その内容は下記のHPの中に記されている。おそらく平成23年12月提言、及び3新学術領域研究の見直し、の中に記されているものが主なもの思われる。以下のとおり(*2)。 ~~ここから~~ 5(3)文部科学省及び公的研究機関に求められる事項 1)公的研究費により若手の博士研究員を雇用する公的

    余剰PDの解決はされるのか
  • 「頑張らなければいけない」空気に、人が組織で取り囲まれる怖さ-渡辺美樹氏、木村剛氏を観察した私の経験から : アゴラ - ライブドアブログ

    OPINION 「頑張らなければいけない」空気に、人が組織で取り囲まれる怖さ-渡辺美樹氏、木村剛氏を観察した私の経験から / 記事一覧 ワタミ、素晴らしい会社だと思うが…ー出来すぎるトップの功罪 もう旧聞に属する話かもしれないが、ワタミグループで、長時間勤務を繰り返した26歳の女性社員が08年に自殺した問題で、今年2月に過労による労災認定が下りた。とても気の毒な話で、亡くなった女性に心から哀悼の気持ちを表明したい。 ワタミの創業者で現会長の渡辺美樹氏の以下のツイッターが事件に波紋を広げた。 「社員の幸せ」「労務管理できていなかったとの認識はない」という表現に戸惑った。この事件の細かな事実関係を私は報道以上に知らない。渡辺氏は誠実な方なのだろうが、このツイートは残念だった。 ただし、こうした悲劇が渡辺氏の周囲に起こりやすい状況であったとは、推測できる。私は渡辺氏には2度、記者として取

  • 大学入試から始まるグローバル戦略:センター試験は産業化できる

    今回は結論から述べる。 「大学入試センター試験は民間委託し、アジア諸国など海外の学生も受験できるよう、グローバル展開してはどうか。」 この理由は3つある。第1は試験回数の少なさ、第2は効率性の向上、第3はアジア諸国など海外の優秀な学生の取り込み(=成長戦略)である。 第1は「試験回数の少なさ」である。日の大学入試センター試験は年1回しか実施されない。他方、アメリカの大学入試センター試験に相当する「SAT」(Scholastic Assessment Test)は年最大7回も実施される。年1回実施の日では、何らかの理由でトラブルや不測の事態が発生した場合、受験生は取り返しのつかない不利益を被る。自然災害の多い日において、中でもリスクが高いのは地震である。 2011年3月11日に発生した東日大震災はセンター試験後であったが、首都圏をはじめとする多くの大学で二次試験(後期)が中止された。

    大学入試から始まるグローバル戦略:センター試験は産業化できる
  • 「成人式はバカと暇人のもの」 若者に「尾崎豊」を強要するのはやめなさい

    成人の日である。今年の成人式は、実に気持ちいい。というのも、この10年くらいずっと続いてきた「成人式で荒れる若者」的な報道を目にしなかったからだ。ネット上で話題になったのは、主に次の二つである。一つは、朝日新聞の社説だ。「成人の日に―尾崎豊を知っているか」。もう一つは、熊県阿蘇市の佐藤義興市長が成人式でお世辞にも上手だとは言えない歌を披露したことである。 実に牧歌的であると感じた。特に前者については、「若者はかわいそうだ」と感じざるを得なかった。大人もバカで頼りないことを可視化してしまったからだ。 ■新成人も、私も「尾崎豊」を知らない まず、「尾崎豊を知っているか?」と言われても、新成人は「知りません」と答えざるを得ないだろう。新成人はとっくに平成生まれで90年代前半生まれだ。尾崎豊が亡くなった92年に彼らは生まれたのだから知るわけがない。ただ、名前と代表曲くらいは知っているかもしれない

    「成人式はバカと暇人のもの」 若者に「尾崎豊」を強要するのはやめなさい
    motoson
    motoson 2012/01/10
  • 博士課程:一握りの勝者を作るために、膨大な敗者を作り出して良いのか? 井上晃宏 : アゴラ - ライブドアブログ

    博士課程:一握りの勝者を作るために、膨大な敗者を作り出して良いのか? 井上晃宏 / 記事一覧 博士課程が大学教員を養成するのに役だつことはある。企業研究職の一部にもなれるだろう。しかしながら、博士の大半は、専門とは何の関係もない職に就く。その知識は、彼らの頭の中に死蔵され、世の中の役に立つことはない。言い換えると、博士になったことで、その他就職組の生涯所得は減少してしまう。 この問題の背後には、年齢制限に厳しい雇用慣行がある。たかだか、5年程度就職が遅れただけで、「2階」に上がれなくなってしまう理不尽さは理解しているが、変える方策がないので、受け入れるしかない。 学部教育の大半は無駄だが、学部を修了したからといって、就職が高卒より不利になるわけではない(機会費用を計算すればマイナスかもしれないが)。しかしながら、大学院博士課程を出ると、確実に、学部卒や修士卒よりも、就職が不利になるのであ

  • ポスドク問題とは、バイオバブル崩壊の結果である  井上晃宏(医師) : アゴラ - ライブドアブログ

    ポスドク問題とは、バイオバブル崩壊の結果である  井上晃宏(医師) / 記事一覧 ポスドク(ポストドクター)問題が騒がれて久しい。行き場のない博士(オーバードクター)を救済するために始められたポスドク1万人雇用事業は、事業仕分けの民主党議員からは「生活保護のようだ」と揶揄されたが、仕分けられることもなく、ずるずると続いている。 博士過剰問題は、83年に「オーバードクター問題」というが出版されているくらい、古い問題なのだが、最近のポスドク問題は、以前のオーバードクター問題とは、少しばかり事情が異なる。最近の博士の就職難は、特定分野、具体的には、バイオ系に集中して発生しているからだ。 そもそも、バイオ系の博士号取得者の絶対数が、異常に多いのである。 (以下の議論では、農学系をバイオ系として読み替えている。理学や工学にもバイオ系博士がいるが、数は少ないので無視する) 各博士の年度あたり

    motoson
    motoson 2011/04/18
    そもそも崩壊するほどのバブルがあっただろうか?
  • デジタルネイティブ礼賛はやめて、学生にもっと教養を持たせる努力をするのが大人の役目- @ogawakazuhiro

    デジタルネイティブ礼賛はやめて、学生にもっと教養を持たせる努力をするのが大人の役目- @ogawakazuhiro エジプトやチュニジア、そして今ではリビアでも起こりつつある民主化の動きの背景に、Facebookを中心としたソーシャルメディアが反政府組織のための文字通りのソーシャルネットワークとして活用されている、というのはいまや社会的な常識として語られるようになっています。 先日放映されたNHKスペシャルを見ましたが、学生を中心とした革命組織が、Facebookを駆使してデモを企画し、民衆を招集するさまが臨場感溢れる映像で紹介されていました。(関係ありませんが、ハッカー集団アノニマスがエジプトのネット遮断策を抗議して一斉攻撃するのですが、彼らがかぶっている仮面が象徴的です) 実際のところ、デモに集まる群衆のほとんどはFacebookを見て集まったわけではなく、各地域にいる革命組織のリーダ

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  • 博士号を活用したマーケティングのあり方  - 元木一朗

    1990年代後半から政策的な意図を以て博士号取得者が大量生産された。この政策の目的の一つは、競争的環境下における基礎研究人材の国家的充実だったと思われる。これ自体は決して間違っていたと思えないが、それが日社会の持つ2つの特性によって「余剰博士」という存在を産み出してしまった。その特性とは、一つには硬直した労働市場、もう一つには他者を評価することが決定的に苦手というものである。 具体的には、限られたアカデミアポストが既得権者によって占められてしまって空きがなく、また、人材が優秀なのかどうかを評価できないため、「運が良くなければしかるべきポストに就けない」という事態となってしまったのだ。 そうした中で、博士号を有効に使おうという会社も現れた。四ッ谷に社を置く「リバネス」という会社である。この会社は教育事業をメインとし、これまでに多くの博士号取得者を採用してきた。そのリバネスがオープンしたの

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  • 本当にできるの?iPS細胞で再生医療 - 仙石 慎太郎

    京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)准教授 文部科学省所轄の科学技術政策研究所がまとめた、今後30年の技術発展の「未来地図」が、今月10日に発表された。これによれば、iPS細胞(誘導多能性幹細胞)による再生医療が実現するのは2032年であり、砂漠の緑化技術が普及するのは2029年である。ちなみに調査は、各調査分野に詳しい大学教授や民間技術者ら約2,900人による予測というから、いわゆる専門家の間の合意(コンセンサス)とみなしてよいだろう。 そして、多くの国民は、ここでひとつの素朴な疑問を感じるに違いない。「なぜそんなに時間がかかるの?もっと早く実現すると思っていたけど?」という疑問をである。確かに、巷の報道は、あたかも明日にでも実現しそうな風潮である。 たとえば、年7月7日の毎日新聞朝刊に記載されネット配信された、以下の記事を見てみよう。 iPS細胞で安全にせ

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  • 私的なことがらを記録しますが今週、紙の本を大量に捨てました ― 藤沢数希

    正直に白状すると、筆者は電子書籍なるものを大変冷ややかな目でみていた。なぜならば人々の行動の変化というのはとてもとても緩慢なものだからだ。電子書籍は普及しないと思っていたし、仮に普及したとしてもそのスピードは非常に遅いものになるだろうと思っていた。筆者は金融市場で仕事をしているのだが、金融の世界では、理論的にはすぐれているはずのものがまったく普及しないことが非常に多い。 たとえば株式インデックスを見てみると、今でも圧倒的に人気なのが日経平均株価である。この225銘柄の株価単純平均の指数は、時価総額加重平均ではないので市場代表性も悪く、また日株の投資対象としても銀行セクターのウエイトが極端に低くて、電機セクターや薬品セクターがいやに高かったりとかなりいびつだ。日経平均株価より出来のいい日株のインデックスは両手の指で数えられないほどある。しかし人々は日経平均を使い続ける。先物やオプションの

  • アゴラ : なぜ薬剤師でなければ医薬品を取り扱ってはいけないのか  井上晃宏(医師、薬剤師)

    私は医師であると同時に薬剤師である。管理薬剤師を3年ばかりやっていたこともある。 ここで述べることは、業界内の人間にとっては、ほとんど常識とも言うべき事柄であるが、マスコミやWebに流れることはない。業界にとって不利な事柄だからである。(テレビ業界にとっての電波利権のようなものだ) 50年前の医薬品は不均一で不安定だった。品質や有効性や真贋を見分ける必要があった。また、薬は、製薬会社から供給される形態のままで患者に使うことができず、エキスを抽出したり、増量剤を混ぜて分包したり、打錠機で錠剤としたり、カプセルに詰めたり、ワセリンに混ぜて軟膏にしたり、溶かして水剤とする必要があった。輸液も、製品の種類が少なく、めんどうな調製を必要とした。そのためには、専門技術者が必要だった。 宮崎駿監督作品「魔女の宅急便」の冒頭で、キキのお母さんがやっている仕事が、かつての薬剤師の仕事だった。薬局は単なる小売

    アゴラ : なぜ薬剤師でなければ医薬品を取り扱ってはいけないのか  井上晃宏(医師、薬剤師)
  • 薬剤師に薬学はいらない 井上晃宏(医師)

    「日の薬学教育―医療の質を高める薬剤師を」というがある。 著者は林一、共立薬科大学(現慶応大学薬学部)において、物理学を教えていた教員だ。 曰く、 「薬剤師の仕事はおろか、薬の研究すらしたこともない教員が、薬の学を教えている」 「アリバイ的に抗腫瘍活性とか抗菌作用とかいう言葉をちりばめているが、よく読むと、薬とは何の関係もない論文が量産されている」 「薬学部とは、いわば、空気力学を教えて、操縦法を教えないパイロット養成所である。教官は飛行機に乗ったこともない」 薬学部は、実験科学の研究教育機関としてなら、それなりに見るべきものがあるのだが、職業教育機関としては論外である。薬剤師の仕事とは、何の関係もないことを、平然と講義し、実習させている。 かつて、私(井上)は、薬学部教員や薬剤師に、 「薬学部での教育って、薬とは無関係なことが多いけれど、仕事に役立っているか?たとえば、膨大な時間をか

    薬剤師に薬学はいらない 井上晃宏(医師)
  • 学ぶことにインセンティブがある社会を作る必要性 - 松本徹三

    岡田克敏さんの「足利事件の一側面」を面白く読みました。ここでは、「科学的思考の出来ない人が、科学技術の知識を要する判断を平気でやっている」ことの問題点を指摘しておられます。論理的、科学的な思考の出来ない人は、たまたま誰かが申し立てた「科学技術の知識らしいもの」を無批判に信じてしまう傾向があります。こういう人達は、「自ら考えて論理的に納得すること」をはじめから放棄しているのと、「一部の例証だけから原理を導くことは出来ない」という「科学の世界では当たり前のこと」を理解していないからです。 これは、明らかに諸外国よりも日においてより多く見られる現象です。私は、その一因は、「文科系」と「理科系」を殊更に分けているかのような、現在の日教育制度にあるような気がします。また、会社などの組織体においても、お互いに「自分達の得意分野によそ者を入れたくない」といった「縄張り意識」が働いていることが多いの

    学ぶことにインセンティブがある社会を作る必要性 - 松本徹三