タグ

ブックマーク / d.hatena.ne.jp/kenjiito (12)

  • 科学コミュニケーションと個人と組織 - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    先週末、東京で開かれた研究会に二つほど出席した。どちらも、とても印象深く、かつ色々と考えさせられるものだった。その二つの研究会で共通したのは、今回の震災で、科学コミュニケーションに対する批判が向けられている、という話だった。あれだけ予算をつぎ込んでおいて、非常時にいったい何をしていたのか、という批判があるらしい。これはこれで気にかかる問題であるが、それとは直接関係なく、これらの研究会に参加して、思ったことを書いてみる。*1それは、組織と個人の関係、あるいは特殊利益と一般利益の関係の問題である。 組織と個人 私が考えている状況とは次のようなものである。日社会における多くの個人は、何らかの組織に所属している。多くの場合、組織に雇用されるという関係にある。それは、高度な教育を受けた知的職業においてもそうで、一方で一部の医師や弁護士のように自営業的な独立性を持つ人たちもいる一方で、大部分の研究者

    motoson
    motoson 2011/05/08
    考えさせられる
  • 9大学総長・塾長による緊急政策提言 「国家の成長戦略として大学の研究・人材育成基盤の抜本的強化を」 - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    http://www.hokudai.ac.jp/shinchaku.php?did=536 この提言、旧7帝大早慶が何の権限があって、リーダーシップをとるのか、という疑問もあるが*1、ここの提言自体は、ざっと見た限りでは、至極もっともだと思う。とくに若手研究者の育成・支援を最初に置いているのは評価できる。 いろいろ提言が上がっているが、とりあえず「人件費削減方針の撤廃」がかなり重要だと思う。毎年の人件費の一定率の削減は、国立大学の運営にかなり悪影響を与えており、当然、若手の雇用問題にも響いている。大量ポストをつくれ、とまでは言わないが、物品や設備よりも研究者の雇用と育成に充てる自由はせめて大学が持つべきだ。 あと「国・自治体が率先しての博士人材の採用」。企業に博士を雇わせようとする前に、まず国・自治体が範を示すのは当然のことだと思う。 そして、 「大学に対する国民からの直接支援を促進する

  • Ph. D. Studentship - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    科学史関係のメーリングリストで、ときどきイギリスやヨーロッパの大学におけるPh. D. Studentshipの募集の広告を見かける。こういう制度はうらやましいと思う。アメリカではこういう言い方はしないけれど、大学院生の生活をサポートするのは当然なので、事実上、同じ制度があるといってよい。つまり、先進国で、大学院生のサポートが貧弱なのは、かなり日独特の現象である。 Ph. D. Studentshipというのがおおよそ次のようなものだろうと思う。ようするに、大学が給与のついたポジションとして、ある分野、研究テーマの大学院生を受け入れる。つまり、大学院生、というのがポスドクと同様に給与がついた職になっているわけだ。応募者はこれに応募し、選考の結果採用されると、大学院生として入学して、勉強・研究しつつ、給与をもらう。なんらかの義務、teaching assistantやresearch as

  • 研究における動機と効果の乖離 - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    基礎科学についての議論で、ひとつ話をややこしくしているのがこの点である。これはある意味わかりきったことかもしれないけれど、意外なほど無視されているようにも思われる。 基礎科学研究の動機と理想的な研究環境 第一に、基礎科学に関係するような研究者にとって研究という活動を行う動機は、基的には、その研究が興味深いからである。興味深い、というのは実に主観的な表現だが、実際、主観的だからこそ、強力な動機になるのである。このことがテーマの選定や、研究成果の評価にも関係するし、何よりも研究者を研究に駆り立てて、知的興奮状態において、時間外労働をものともせずに仕事をさせるのは研究のこの側面なのだ。 もちろん、そうでない研究者がいないとはいわない。業績を上げることが単純に目標の研究者もいるだろう。研究がゲームのようなもので、競争相手と勝つことが目的の人もいるらろうし、研究成果にともなう名声や、金銭的な利得が

  • 事業仕分けとProblem of Extension - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    このところ、時事的な問題に関しても、研究に関しても、大学関係の仕事にしても、あまりにも色々なことがあって、圧倒されている。アーカイブズ調査に出張している間は、アーカイブズが開いている以外の時間はのんびりできるかと思ったら大間違いで、大学関係の仕事の宿題もいくつかあるし、何よりも、「事業仕分け」という大事件が起こっているときに、それに無関心ではいられないのである。 前のエントリーにちょっと書いたけれど、これは専門性の問題に関係している。そして、現在STS(科学技術社会論)のかなりホットな問題の一事例になっているのだ。まだまだ日では理論的な問題だとおもって、ゆったり構えていたところが、突然、現実の、かなり大きな問題として降ってきて、少しあわてている、というのが正直なところである。 Studies of Expertise and ExperienceとThird Wave これはつまりこうい

  • いわゆる「事業仕分け」について(科学技術人材育成関係を中心に) - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    今週は、行政刷新会議のワーキンググループの会合が三回開かれ、いわゆる「事業仕分け」がなされた。日にいたら、中継を見ていたところだが、出張中で見ることもできず、やむを得ないので、今日になって情報収集をしている。 三つのワーキンググループが並行して走るという興味深いやり方で、そのうちの第三ワーキンググループが学術行政にかかわるもので、とくに13日にいくつか気になる決定がなされた。スーパーコンピュータやSpring8については、それぞれ専門家が議論するのに任せよう。私はこれらの事業の予算縮減や、凍結は、それほど大きな問題ではないと考えている。それらはより時間をかけて、やっぱり実施が望ましいとなれば、後からやり直せるからだ。復活に成功すれば、研究が一定期間遅れるだけのダメージで済む。私が一番気になるのは、人材育成関係の事業の予算縮減である。人材育成・若手支援で道を誤れば、一世代の人材が欠落し、長

  • 研究室の蔓延 - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    今日の入試説明会を聞きつつ、漠然と思ったこと。 うちの専攻ができたとき、タコつぼ型の大学院の組織をやめようというのが理念の一つだったそうだ。生命系の大学院では、研究室ごとに完全に独立して、分断されていて、隣の研究室では何をやっているのか分からない、という状況が普通であり、院生も、一つの研究室に所属すると、そのなかで全生活が完結するような大学院生生活を送ることもよくあるらしい。うちの専攻では、そういうことをすると非常に視野の狭い生命科学の研究者しかできないので、なんとか別の仕方を考えようということだったようである。たとえば、物理的なスペースにしても、研究室に割り当てることはせず、専攻全体で管理する、というのが建前だった。 ところが、今日の入試説明会で感じたのは、結局、「研究室」というものが出来てしまっていて、どうやら縦割り、タコつぼ化の方向に動いているらしい、ということである。というのも、研

  • ポスドクは一万人がいいのか? - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    まず、よくある誤解として、ポスドク1万人計画が博士過剰問題の原因であるようかのような議論がある。これはあやまりで、当の起源は大学院重点化である。ポスドクの増加は、任期付きでも雇用機会が増えているのだから、全体として雇用者は増えているはずなのであり、博士過剰の問題を緩和しているはずである。 ただ、ポスドクのポストは一時的なものなので、問題の先送りでしかない、ということはよく言われる。つまりポスドクが終わったあとのことはどうなるのか、ということである。その観点から、ポスドク一万人計画の一万人というのはあまりにもキリの良い数字で、当にそのあとの雇用との関連で、適正数だったのか、という疑問が生じる。 今後5年間ぐらいにどれだけ大学のポストが空くか? ポスドクの適正数は、おおよそポスドクの任期の間にどれだけの大学のポストが空くかによって考えてみる。日の場合、ポストの数が比較的固定されているので

  • 博士は募集停止すべきか? - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    「博士は募集停止しろ、衝撃の提言」(科学政策ニュースクリップ) http://d.hatena.ne.jp/scicom/20091013/p1 次のの紹介: 詳しいことはを直接読んでから議論すべきだが、すでにこのエントリーでずいぶんと反響が広がっているようである。とりあえず、を読む前にこのエントリーで紹介されていることについてコメントしてみる。 ここで引用されている文章からすると、博士を募集停止せよというわけではなくて、研究者になる見込みのある院生だけ大学院に入れて、そこに教育資源を集中させよ、ということである。前のエントリーに書いたように、もし現在の大学院が変化しないのであれば、これはきわめてもっともな主張だ。なぜなら、現在の博士課程大学院の大部分は、研究者養成しか念頭においておらず、そこで教育をうけて博士号を取得しても、研究者以外のキャリアはほとんどないからである。 このような

    博士は募集停止すべきか? - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録
  • 学術雑誌の高騰 - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    これはおそらく大学関係者はだれでもよく知っている問題だと思うけれど、今日、大学の図書委員会の会議に出席して、改めて痛感した。いかに学術雑誌が値上げされて、それが大学の予算を圧迫しているかということだ。 しかも奇妙なことに現在のデフレ経済にも関わらず、雑誌の購読契約は毎年5%値上げは珍しくなく、場合によっては10%値上げだったりする。それに円高はいったいどこにいったのだろう。 このように学術雑誌が高騰する理由にはいろいろなものがあるのかもしれない。たとえば、電子化のコストだ。たしかに電子化によって冊子を所有するスペースを持たない大学がより多くの文献にアクセスできるようになったことは重要であり、さらにインターネット上で文献が入手できるようになったことの利便性の向上は計り知れない。学術雑誌の高騰はこれらの便益に対する代価もあるのかもしれない。 それから、電子化された学術雑誌が高価か安価か、という

  • 先端研究開発支援プログラム - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    「民主党さんへ、僕は内定取り消しになりました。」(ブックマクロ開発に) http://d.hatena.ne.jp/takuya_1st/20091006/1254845300 この内定取り消しになった研究者の資金が先端研究開発支援プログラムなのか、やや不明だけれど、ほかに思い当たらないので、多分そうなのだろう。大きな研究費が凍結されたり、打ち切られたりすれば、とぱっちりをうける人は多く出るし、そのダメージはしばしば立場の弱い人に大きくなものになる。そういうことは珍しいことではなく、SSCのキャンセルのときも多くの優秀な素粒子物理の若手研究者たちが人生を狂わされた。こういう実例を見るのはつらい。私だっていつどうなるか分からないのだけれど。 こういう立場の人に対して、冷たいようだが、若手にその一部が行くとしても、大部分は設備投資などに使われる巨額の研究資金をずさんな審査で配分するというのはや

  • 「日曜日の歴史探検:高学歴ワーキングプアとは何か」(IT Media エンタープライズ) - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録

    http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0910/04/news001.html 大学院生の数がここ20年で三倍になっているが、そのもとになっているのが1991年の文部省の「大学設置基準問等の改正」の中の「世界的水準の教育研究の推進」という方針で、そこには次のように書かれているという: 世界をリードするような研究を推進するとともに、優れた研究者や高度の専門能力を持った職業人を養成するための拠点として、大学院を充実強化していくことです こうして、このころから日の大学院に期待される役割が研究者養成だけではなく、高度な専門知識・専門技能をもった職業人の養成も含まれるようになり、それにともなって、研究者の就職市場での需要を上回る博士号・修士号取得者が大学院で養成されるようになった、ということらしい。大学院重点化の問題はもうすこしいろいろあるのだけ

  • 1