経済学が基礎としている概念は、その根底において、個々人の価値観と無縁では存在しえません。 根本的な概念があやふやである以上、表面上をどれほど数学的に取り繕ったとしても、経済学はまともな科学とは言えず、その人が信じる価値観を表明する政治的プロパガンダとしての性質を逃れられないのです。 これは、経済学の概念を物理学における基礎概念と比較してみれば理解できます。 例として、力学における質量を取り上げます。全ての物質は質量を持っていますが、そのことは何らの道徳的な意義を持っていません。どうして物質に質量が存在するのかという理由は、最近ようやく理解が進み始めたところですが、しかし古典力学の範囲においても、質量は完全に操作的定義が可能です。質量の定義は、キリスト教徒だろうとムスリムだろうと無神論者だろうと議論の余地はありません。 一方で、経済学の基礎概念は物理量とは全く異なります。「商品」、「サービス