先日,生涯に一度の夜という記事を書き,それから連想して,中島らもによる「僕に踏まれた町と僕が踏まれた町」のことを書いてみたくなった.なおこの作品については,以前,本をあまり読まない中高生に薦めたい10作品(その2)でも言及した. 中島らもは,ほぼ団塊の世代であり,70年代のヒッピー文化や安保闘争の時代に青春を送っている.酒やドラッグによる破滅的な人生を送った人だった.このあたりはらも自身がエッセイなどに度々書いているが,特に,らも夫人である中島美代子による「らも ― 中島らもとの三十五年」を読むと,凄まじい.そもそも70年代の日本の若者文化は,アメリカ文化を薄っぺらになぞったものであり,そういう時代背景の極北に,らもの人生もあるのかもしれない. しかしそれでも,中島らもの人生には,私を惹きつける何かがある.特に,らもが作家活動を本格的に始めた当初の作品の中の,「僕に踏まれた町と僕が踏まれた