小泉八雲(以下,本名のラフカディオ・ハーンとする)は,多くの日本人が知るところの人物だろう.ギリシャに生まれ,さまざまな国を経た後,明治のころ日本に帰化し,日本の民話や特に怪談を蒐集して外国に紹介した.日本の長い歴史に基づく伝統や文化をこよなく愛したといわれ,それもあって,日本人による人気が高い人物ではないだろうか.私も,ハーンに対しては,ゆかしいような気持ちを持っている.しかしながらそれは,ハーンに対する一般的な理解と異なっているような気もするので,今回はそれを題材にして,エントリを書いてみたい. ハーンは多数の著作を残したが,日本語に訳されているのはごく一部だろう.最も入手しやすいのは文庫本で,その中でも,ハーンの全作品を概観しやすい一冊が,新潮文庫の「小泉八雲集」(上田和夫訳)であると思われる.そして,その「小泉八雲集」に所収されている作品に,「草ひばり」というごく短いエッセーがある