2年ほど前、新人研修からアメリカ駐在まで世話になった会社を辞めて、同じくアメリカに所在するゲーム会社に現地採用で入社した。これは同時に、異国でのややこしい税金処理、乗用車、はては住居まで、至れり尽くせりの駐在員生活に決別し、すべて自己責任で生活することの選択でもあった。そして、その第一歩が、返却した社用車の代わりになる、通勤用の車の購入だった。 アメリカで初めて買う車はボロボロのアメ車でなければならぬ。俺はそう決めていた。車は分相応でなければならぬ、と頑なに考えていた。贅沢な話だが、駐在員時代には、どこか分不相応な処遇への違和感があった。社用車を与えられ、治安の良い地域に、広い住まいを与えられていた。自分の実力と無関係に与えられた、何かふわふわした暮らしだった。 まずは車から、自分の覚悟を表したい。そう思っていた。 で、思うだけで、仕事を辞めた後処理の忙しさにかまけて何もせぬまま、新しい会