今、鳥取の民芸に全国から熱い視線が注がれている。大手情報誌の表紙や特集で地元の窯が取り上げられたり、山陰の手工芸と食を巡るガイドブックがベストセラーになったり…。いずれも女性を意識したビジュアルな作りで、若い世代を中心に好評を得ているという。折しも、鳥取民芸の父・吉田璋也の所蔵品を展示する鳥取民芸美術館(鳥取市栄町)が今年、開館60周年を迎えた。連載では、鳥取に“民芸旋風”を巻き起こした璋也にスポットを当て、璋也がプロデュースした新作民芸から現在の継承者、使い手に至るまで、若者の視点から民芸の魅力に迫る。 「私の生活は(中略)医者が本職で、民芸は道楽か趣味の余技の仕事だと思われているでしょう。だが私にとっては、民芸の心で医者の生活をしているので、二兎(にと)でもなく一つなのです」-。 (「吉田璋也 民芸のプロデューサー」) 美と暮らしを結びつけ、衣食住すべてが民芸でありたいと願った吉田
吉田璋也がデザインした「パン切りナイフ」と「パン切り台」。愛用する山根窯の石原仁江さん(鳥取市青谷町)は「パンを切るだけだから手入れもしなくていいし、20年以上使っている」と話す 「生活のすべてを美しく」-。美の王国を作りたいとまい進する吉田璋也は器(陶芸)をはじめ木工、金工、染織、和紙など幅広い分野で民芸品をプロデュースする。せん抜き、パン切りナイフにパン切り台、筆立て付き水滴、コンセントプレート、襖(ふすま)の引き手にいたるまで。 自分の周りに見える物、使う物すべてを納得のいく美しい物で埋め尽くす勢い。“情熱家”だったに違いない。 牛ノ戸焼の筆立て付き水滴は、形が愛らしく、鳥取民芸美術館の陳列品の中でも特に目を引く。筆を日常使わなくなった現代では、一見用途不明。説明を聞くと、いつでも使えるよう筆先が乾かないように工夫されているという。 中国で使われていた真鍮(しんちゅう)の管から
今、鳥取の民芸に全国から熱い視線が注がれている。大手情報誌の表紙や特集で地元の窯が取り上げられたり、山陰の手工芸と食を巡るガイドブックがベストセラーになったり…。いずれも女性を意識したビジュアルな作りで、若い世代を中心に好評を得ているという。折しも、鳥取民芸の父・吉田璋也の所蔵品を展示する鳥取民芸美術館(鳥取市栄町)が今年、開館60周年を迎えた。連載では、鳥取に“民芸旋風”を巻き起こした璋也にスポットを当て、璋也がプロデュースした新作民芸から現在の継承者、使い手に至るまで、若者の視点から民芸の魅力に迫る。 吉田璋也が試みたものの中には、ひとくちに「新作民芸」といっても、木工品や染織品などさまざまなジャンルが共存していた。中でも新作民芸の口火を切って制作されたのが、陶器製品である。 1931年のはじめ、鳥取市内の陶器店「松村南明堂」で璋也が出合ったのは、古い牛ノ戸焼(現・鳥取市河原町)の茶
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く