法隆寺最後の宮大工・故西岡常一の唯一の内弟子である小川三夫が、いかにして技を伝え、いかにして人を育てるかを、飾らずに語っている。 小川氏は、21歳で西岡氏に入門し、その後、法隆寺三重塔、薬師寺西塔、薬師寺金堂の再建で副棟梁を務め、30歳で徒弟制度による寺社建築会社を作り、以後30年間共同生活によって弟子を育て、2007年に60歳で引退した。この聞き書きは、その引退直後に行われたものである。 「重しを外さないと下は伸びない」 「やれるかどうかなんて考えることは必要ねえんだ。どうやったらできるかを考え、やりながら次を見通すんだ」 「一つのことに打ち込んでおれば、人間は磨かれる」 「ほんとうを覚えるのには時間がかかる。時間はかかるが一旦身についたら、体が今度は嘘を嫌う。嘘を嫌う体を作ることや。それは刃物研ぎが一番よくわかる」 「単純は強いわ。人も建物も図面も、単純できれいに無駄のないものじゃなく