閑静な住宅街に新しく建てられた小さな一軒家。 メールで伝えられた住所を何度も確認し、恐る恐る玄関のチャイムを押す。 すぐに耳馴染みのある声で応答があり、玄関ドアが開く。 ゆるやかなスロープを通り抜け、段差のない玄関で靴を脱ぎ、定員3名の小さなエレベーターに乗り込む。 エレベーターの扉が開いて私の目に最初に飛び込んできたのは、まぶしいくらいの光だった。 清潔な白い壁に大きな窓。 まだ3月の初めだというのに、窓から降り注ぐ陽光のおかげでデイルームは暖房がいらないくらいあたたかかった。 私と管理者と看護師。 その日集った3人で、私たちは小さなデイサービスを始めた。 私が大学を卒業して最初に勤めたのは精神科の病院である。 私はその病院で初めて採用された音楽療法士だった。 当時は音楽療法という言葉も珍しく、医療職における音楽療法士の立場はなんとも不安定なものだった。 大学4年間で苦労して取った資格を