平安中期~鎌倉初期の思想史と漢学 私はこれまで、平安時代の中期から鎌倉時代の初期までの思想史を、さまざまな視角から明らかにしようとしてきました。 最近は、特に漢学に着目しています。漢学とは、大陸から伝来した仏教以外の学問や知識、具体的には儒家を中心に道家や墨家などが混合したものを指します。当時の仏家の用語でいえば、「内教」「内学」である仏道に対する「外教」「外学」にあたります。 従来、この時代の漢学は必ずしも正しく評価されてきませんでした。実際には漢学の影響による思想などが、仏教の影響によるものと誤解されたりもしました。ここではそうした一例として、当時の歴史思想、すなわち歴史の捉え方について取り上げます。 「末法思想」に関する長年の誤解 平安中期から鎌倉初期の歴史思想というと、中学高校の日本史の授業で習った「末法思想」を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。 末法思想とは、簡単にいうと