アメリカでは大手テクノロジー企業が反トラスト法(独占禁止法)違反で次々と提訴されるようになっている。この新たな"訴訟ウェーブ"の青写真を用意した反トラスト法研究者ディーナ・スリニバサン(40)は3年前、デジタル広告企業の幹部だった。仕事に退屈し、テック業界がもたらす荒涼とした未来に懸念を深めていた。 「フェイスブックとグーグルだけが勝ち組となり、それ以外の全員が負け組となる。そういう不利な状況になっているのに、問題が広く理解されていないと感じていた」とスリニバサンは振り返る。 そこで彼女は世界最大の広告代理店グループWPPの仕事を辞めて、法学論文を書くことにした。論文を執筆するのは、イェール大学のロースクール(法科大学院)を卒業して以来のことだった。 内部知識から生まれた斬新な理論 学者としての経歴があったわけではない。が、デジタル広告業界の内部知識と、大量の書籍から取り入れた経済学の知見