「人間の寿命は延ばせる」と言い切るベストセラー作家は数多いる。だが、そのなかでヴェンカトラマン・ラマクリシュナンは、2つの点で他と一線を画す。 まず、英ケンブリッジ大学で教鞭を執るラマクリシュナンは、英国王立協会の元会長で、リボソーム(註:RNAとタンパク質の複合体)の立体構造と機能を解明し、2009年にノーベル化学賞を受賞した人物だ。つまり、世界でも指折りの優れた生物学者である。次に、多くの同業者と違い、彼は「この分野にまったく自分のお金を投資していない」。そのため、長寿に関する近年の発見がしばしばセンセーショナルに発表されるのに対し、客観的で批判的な見方ができるのだ。 名著『Why We Die 老化と不死の謎に迫る』(日経BP 日本経済新聞出版)は、英米で高い評価を受けた。この本でラマクリシュナンは、老化現象の理解に関する科学がいかに進化してきたかの歴史をたどり、「カロリー制限」、「