一例を挙げよう。スーダンの首都での話だ。昔ハルツームで絶品の酸辣湯を味わったことがある。この辛酸っぱい四川料理のスープ、実は筆者の大好物なのだが、まさかアフリカのスーダンでこんな美味いものが食べられるとは思わなかった。 昔と言っても数年前の話ではない。今から30年も前の1980年夏、筆者は外務省の在外語学研修員だった。エジプトでアラビア語を学んでいた時のエピソードである。カイロはもちろん、中東・アフリカ全域でも、まともな中華レストランなどなかった時代だ。 だからハルツームで中華料理と言われてもピンとこなかった。「どうせ麺はスパゲティだろ」などと高をくくっていた。当時一般アラブ人は中華麺とイタリア麺の区別すらできなかった。それにしても、なぜスーダンに本物の四川料理があったのか。 理由は簡単。当時中国政府はスーダンで農業援助プロジェクトを実施していた。四川から数百人の農民が「村ごと」動員され、