奥野克巳 立教大学異文化コミュニケーション学部教授 東南アジアの熱帯雨林とその周辺地域に住む人びとを対象に調査研究を進めてきた文化人類学者。 2009年1月30日に、パリで、「遠近法主義とアニミズム('Perspectivism and animism’)」と題して、フィリップ・デスコーラとエドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロによる対談が行われた。ヴェルヴェトボイスの低音のデスコーラに対して、ヴィヴェイロス・デ・カストロが、襲いかかるように挑んでいく。ヴィヴェイロス・デ・カストロは、デスコーラは、せっかく西洋思考を破壊するための爆弾を仕掛けたのに、それを取り除いてしまっているのではないかという。 しかし、ほんとうにそうなのか。自然がたんなる材料ではなく、高度に論争的なトピックへと移行した現代において、人類学にとって、新たな輝かしい時代の幕開けではないのかと、対談をまとめたブルーノ・ラ
文化理解における相対主義ということがよくいわれる。これは自分が属する文化(自文化)を絶対化し、その尺度で異文化を測ってはならず、むしろ自文化を相対化し、異文化をそれに固有の尺度で測らなければならない、という主張である。こうした考えは、レヴィ・ストロースが文化人類学で発案した構造主義に源を発し、もともとは文化人類学者たちがしきりに主張してきたものである。この流れに乗った一部の宗教学者たちは、宗教人類学なるものを開発し、相対主義を、宗教理解についても及ぼした。 一九五〇年代から七〇年代にかけて、こうした文化人類学者、宗教人類学者たちの主張は、欧米や日本の知識人たちに強烈な影響を与え、おおむね受容されていった。これは、異文化、異教を理解するためにはまことにもっともな態度だと見えがちであること、自文化、自教の尺度から異文化、異教のありかたに少しでも疑義を呈するやいなや、文化人類学者から「偏狭な自
昨日述べたとおり、国家が神道を保護したのは明治4年ごろまでで、それ以後は保護せず、それでいて宗教的行為を認めなかったため、宗教的にも財政的にも神社は苦しめられました。官国弊社も例外ではなく、保護されたのは伊勢神宮と靖国神社だけです。ところで、205Pを参照すると、戦後すぐ、カトリックはマッカーサーに「靖国神社は宗教を問わず、全ての戦没者が平等に祭られている。これを廃止することは間違っている」という意味のことを言ったということです。 さて、昭和16年頃、教科書に「現御神」(あきつ・み・かみ)なる用語が登場しました。そもそもは、浄土真宗の加藤玄智が創作した「現人神」「天皇教」なる語が始まりでした。彼は天皇をキリスト教的神と説明しました。「現人神」という言葉を作った上杉慎吉は、民間人であり、政府とは関係ありませんでした。 国家神道という用語を考えたのも加藤玄智で、彼の説(いや妄言)が英語の著書に
一、はじめに あるものの見方が、特定の歴史的・社会的な状況によって産み落とされ、そうした状況のおかげで広く信奉者を獲得するということは、それほどめずらしい話ではない。そして状況の変化に応じて、その内実を変え、姿を大きく変えていくということも、またよくある話である。その挙げ句に、そのものの見方が、それを産みだし、あるいは変形した状況自体を構成する要素になっていくというのも、おおいにありうる話である。私がこれから論じようとする一つのものの見方--文化相対主義--も、そんなふうに状況と結び付きその構成部分となった経緯をもつものの見方の一つである。 文化相対主義とは、通常理解されているところによれば、人間は、それぞれが独自の価値を持った異なる文化に所属しており、一つの文化の価値や認識の基準を別の文化に単純に当てはめて理解することは出来ない、という考え方である。こうした考え方が、人間が--それぞれの
フランクファートの最新刊『真理について』(2006年)をペラペラ斜め読みしましたが、これは今年度初頭の話題作『ウンコな議論』の続編となっています。 ウンコな議論 作者: ハリー・G・フランクファート,山形浩生出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/01/11メディア: 単行本購入: 13人 クリック: 143回この商品を含むブログ (124件) を見る On Truth 作者: Harry G. Frankfurt出版社/メーカー: Knopf発売日: 2006/10/31メディア: ハードカバー クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る 「ウンコな議論」とは、真偽に関心を払わずもっぱら人を説得できるかどうかという議論の「効果」のみに関心を払う態度だといえるでしょう。つまり真実やウソが問題なのではなく、まさに議論のための議論=屁理屈、議論のまやかしという意味です。「ウ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く