現生人類と共存していた時代、ネアンデルタール人の身に何が起きたのか。なぜ彼らだけが滅びたのか。「ナショナル ジオグラフィック日本版」10月号では、その謎に迫るレポートを掲載した。 ネアンデルタール人は、私たちに最も近かった人類の仲間で、ほぼ20万年間にわたって、ユーラシア大陸に散らばって暮らしていた。その分布域は今の欧州全域から中東やアジアにまで及び、南は地中海沿岸からジブラルタル海峡、ギリシャ、イラク、北はロシア、西は英国、東はモンゴルの近くまで達していた。西ヨーロッパで最も多かった時期でも、その数はせいぜい1万5000人程度だったと推定されている。 エル・シドロン洞窟の悲劇が起きた4万3000年前には、気候が一段と寒くなり、ネアンデルタール人は欧州のイベリア半島と中欧、地中海沿岸の限られた地域に追い込まれていた。加えて、アフリカから中東、さらにその西へと向かう現生人類の進出も、分布域の