日本史は面白い。しかし、「ほんとうのこと」を知るためには、やはりスキルと知識が必要だ。歴史を学ぶ、歴史に学ぶ――そのために必要なこととは? 〝本物の歴史の学び方〟を教える、東大教授・本郷和人氏の連載「<日本史のツボ>のツボ」。第6回の今回は、前回(第5回)に引き続き「史料を読むとはどういう行いか」について、2回にわたって解説します。 第6回その①はこちら→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71713 第6回・後編では「史料を疑う」という営為が研究者の間で疎かにされている事情を解説するとともに、前編(その①)で取り上げた「将軍くじ引き」の真相に迫ります。 研究者が史料を疑わない事情 史料を疑う、という姿勢は研究者仲間からたいへんに評判が悪い。理由は2つあるだろうと考えている。 まず1つは、その研究者が能力が乏しくて、史料を疑うという営為を理解できない場