毎年、書店の閉店するニュースは定期的に流れてくるが、その中でも今年は、しばし人を感慨にふけさせるような、ひとつの時代の終わりを想起させる話が多い。 具体的に言えば、一月には名古屋の七五書店の閉店があった。三月には東京駅八重洲口の八重洲ブックセンターが閉店し(この店は移転のための一時閉店)、四月は鳥取の定有堂書店、そしてこの七月末には名古屋のちくさ正文館書店本店(以下ちくさ正文館)が、その六十余年の歴史に幕を降ろした。 書店閉店のニュースが流れてくれば、それを惜しむ声、憤慨する声が、毎回決まって聞こえてくる。それを聞くのがあまり好きではないので、そうした話からはなるべく距離を置くようにしているのだが、ちくさ正文館が閉店する少し前に見かけた、店長の古田一晴さんのコメントだけは、思わず身を乗り出して読んだ。それは何というか、閉店直前の店とは思えない、あまりにも古田さんらしいコメントだったからだ。