「母を東京に連れてこようかと悩んだ時、『見知らぬ土地ではかえってお母さんに酷』と行政の福祉担当者にハッキリ言われて、気持ちが整理できました」(東京都港区で)=吉岡毅撮影 作家の姫野カオルコさん(50)は、若いころから親類の介護にかかわり、15年前には父を見送り、今はパーキンソン病の母(85)が暮らす遠方の施設に通っています。 実際のお世話より、子ども時代の暗い記憶が呼び覚まされ、かつての「家族の葛藤(かっとう)」に再び直面させられることがつらいといいます。 「何かしなくては」 東京で暮らし、実家のある滋賀に通う身ですから、「介護をしてきた」といえるほどのことをしてきたのではありません。 ただ、実家は地方の古い家。近くに祖父母や親族が住んでいて、後継ぎだった父は障害のある叔父や病身の伯母を世話していました。そんな関係の延長で、私は東京の大学に進学してからも、親に頼まれ、一人暮らしの病気の親類