アール・ヌーヴォーとアールデコをまたいで活躍した偉大なアーティスト“ルネ・ラリック“。クルマのボンネットに配す「カーマスコット」の名作を多く手掛けたことでも知られています。ジュエリー作家だったラリックはなぜガラス工芸へ、そしてカーマスコットづくりへと傾倒したのか? その背景にある芸術やクルマをとりまく変化とは? 有識者とともに社会や文化、歴史的観点からモビリティを考えるリレーコラム。最終回の今回は6月30日に開催されたトヨタ博物館開館30周年記念トークでの、日本ガラス工芸学会理事の池田まゆみ氏による「ルネ・ラリックとカーマスコット」を紹介します。 時代がラリックをガラス工芸作家にした。 勝利の女神(1928年) ルネ・ラリックは1860年にフランスで生まれたジュエリー作家で、ガラス工芸作家です。 1860年という時代は、日本でいうと江戸末期の万延元年。そしてラリックが亡くなったのは1945