バスの間のせわしい30分 「写真、トリマセンカ」。たどたどしい日本語で、背後からそう声をかけられた。最北端、宗谷岬での話である。振り返ると、中国の方とおぼしき40歳前後の男性が立っている。べつにキャッチセールスではない。一人旅の者同士。彼の発案により、まず僕が「日本最北端の地」碑をバックに僕のカメラで一枚撮ってもらう。続いて彼のカメラで、やはり碑をバックに彼の写真をパチリ。 時は2009年1月26日。今年はこの日が旧正月、つまり中国風にいえば春節だ。「私、台湾から春節休暇できました」。思わず新年の挨拶が口をついて出る。彼もニッコリ笑って、「あけましておめでとうございます」。……しかし日本なんて広いようでいて狭いもんだ。最北端のこの地に、最西端の島のさらに西から、日本列島のすべてを飛び越えひょいとやってくる。べつに何も不思議なことではないのに、なんだか不思議な気がしてならなかった。 夏季はい