「らっしゃい、らっしゃい。今日は甘鯛(あまだい)が安いよ」――。威勢のいい店員の掛け声が響き渡る店内は、平日の午前中にもかかわらずにぎわっていた。ここは海辺の魚市場……ではない。埼玉県川口市の住宅街にある「角上魚類 川口店」だ。 角上魚類は首都圏や甲信越地方に22店舗を展開する「鮮魚専門チェーンストア」。その多くが、内陸部のロードサイドに立地する大型店舗だ。しかし広い店内に並ぶのは魚とすし、そして海鮮を使った総菜だけで、肉や野菜は一切扱わない。驚くべきはその売り方だ。 まるで魚市場のような対面販売コーナーがあり、1匹丸ごとの生の魚がずらりと並べられている。そして店員が客と対話しながら、魚を売っていく。創業者の柳下浩三・角上魚類ホールディングス(HD、新潟県長岡市)会長兼社長は「昔ながらの魚屋の商売を貫いている」と話す。 だからセルフサービスが主体のスーパーと比べると当然、人件費はかかる。労