今年10月27日、香港の立法機関である香港特別行政区立法会において、映画に関し過去へ遡った検閲処罰を可能とする条例改正案が可決された。香港では今年6月にも国家安全維持法に基づく検閲の方針が示され関係者に衝撃が走ったばかりだが、中国当局による香港映画への締めつけは留まるところを知らない。こうした流れに対し、表現の自由を尊重する観点などから香港映画の未来を危ぶむ声は大きい。危機を憂う心情に対しては共感を覚えつつも、外野でただ嘆いて済ませることを良としない立場から、ここでは直近の実作に即して香港映画すなわち香港電影の今後を展望したい。 『我が心の香港 映画監督アン・ホイ』は、丸ごと香港電影史とさえ言える、1952年に一家で香港へ移住した許鞍華(アン・ホイ)の一代記だ。長年の親交をもつ張艾嘉(シルヴィア・チャン)や劉徳華(アンディ・ラウ)ら香港スター俳優の出演をはじめ、徐克(ツイ・ハーク)、陳果(