朝刊を手にとると、「市場の古本屋ウララ」の店主・宇田智子さんがインタビューに答えていた。「古書往来座」の瀬戸さんが、宇田さんのことを「社長」と呼んでいたことを思い出す。あれは何がきっかけで「社長」と呼び始めたんだったっけか。部屋でひとり考えていても答えは出ないから、瀬戸さんに「社長」の記事が載った朝刊を見せにいこうと、久しぶりで「古書往来座」を目指す。 店はシャッターが下りていて、「感染防止休業中です。」と書かれた紙が赤いビニールテープで貼られていた。入り口の扉にも同じ貼り紙があり、「準備中」と書かれているけれど、店内には灯りがともっていた。中を覗き込んでみると、こちらに気づいた瀬戸さんが扉を開けてくれる。瀬戸さんは髭を剃っているところで、「マスクしてると、髭剃んなくなっちゃうね」と笑う。 瀬戸さんに会うのは、3月30日以来、1ヶ月半ぶりだ。最後に会ったのは、東京都知事による緊急記者会見が