2010年大相撲夏場所。序盤戦から上位力士たちの勝敗は荒れ模様。千秋楽を迎えたこの日、国技館は異様な熱気に包まれていた。なぜなら、横綱白鵬、大関日馬富士、大関琴欧州、関脇把瑠都の4力士が、すべて12勝2敗と横一線で並んでいたからだ。 まずは把瑠都と日馬富士の一戦は、水入りの大相撲で把瑠都の豪快な上手投げが決まり、結びの白鵬と琴欧州の一戦は、白鵬の内無双がやはり豪快に決まった。 これより優勝決定戦。白鵬と把瑠都が土俵に上がる。二人とも肌は紅潮している。場内はかつてないほどの興奮状態。何度かの仕切り直しを繰り返して、いよいよ制限時間いっぱいが近づいてきた。 土俵下にいる東西の呼び出しが立ち上がる。立行司木村庄之助の軍配がかえる。いよいよ世紀の一戦が始まるかと思われたそのとき、東側の花道がどっとどよめいた。蹲踞の姿勢を取りながら一瞬だけその方向に視線を送っcは、驚いたように口を開けてその場に立ち