痴漢に遭う女性が後を絶たない一方で、メディアは冤罪被害ばかりを取り上げる。なぜなのか。龍谷大学犯罪学研究センターの牧野雅子氏は「日本の男性メディアが1990年代までは痴漢を『娯楽』として楽しんでおきながら、現在は『冤罪被害者』としての男性像を強調してこれまでの『加害』をなかったことにしている」という——。 メディアと男性が作った痴漢文化、痴漢ブーム かつて日本のメディアには「痴漢文化」「痴漢ブーム」があった。出版、新聞、テレビを問わず男性メディアに共通した現象だった。とりわけ1990年代は、痴漢体験記や痴漢マニュアル、痴漢常習者による手記が出版された他、雑誌には痴漢を扱った記事が数多く掲載された。痴漢専門誌が創刊されたほどだった。 男性誌には、痴漢しやすい場所の情報が掲載され、常習者の手口や痴漢だと通報された場合の対策など、痴漢のススメとしか言いようがない記事が掲載されていた。その時代のこ