あらすじ 貧困に喘ぎ、暴言をまき散らし、女性のぬくもりを求め街を彷徨えば手酷く裏切られる。屈辱にまみれた小心を、酒の力で奮い立たせても、またやり場ない怒りに身を焼かれるばかり。路上に果てた大正期の小説家・藤澤清造に熱烈に傾倒し、破滅のふちで喘ぐ男の内面を、異様な迫力で描く劇薬のような私小説二篇。デビュー作「けがれなき酒のへど」を併録した野間文芸新人賞受賞作。 -- 本書より引用 読書感想 読みどころ 冴えない30過ぎの男による一人称語りの私小説。 恋人を求め、風俗嬢をなんとか口説き落とそうと失敗する話(けがれなき酒のへど)、念願の彼女と同棲を始めるも些細なことで怒り狂いながら依存する狂人的な生活の話(暗渠の宿)の二篇収録。 一切己の欲望に逆らわない男には俗人と聖人が同居しており、その姿からは人間本来の姿が透けてみる。 恋人を求め風俗を渡り歩く男の話〜けがれなき酒のへど 本書は二篇の少作品か