苛められたことも苛めたこともある。 投げつけられる言葉や 自分の持ち物に手をかけられることは、 悲しく怖いものだった。 人に同じことはしないと決めたのに、 六年生のとき、友人と一緒になって 転校生の靴を隠した。 赤いコンバースのハイカット風の靴だった。 埃と蜘蛛の巣が張っている 下駄箱近くの傘立ての下。 提案する友人を止めようとも、 かといって靴を元通りにもしなかった。 そんなことをしたら、 自分もやられる側になるという 幼い世界に自分はいた。 次の日、転校生から問い詰められた。 お気に入りの靴だったのに、 埃と蜘蛛の巣がついて、 出そうとしたときに傘立てに引っかかって、 靴が破れて、もうはけないと。 人が合わせ持つ、優しさと恐ろしさを 既に自分が証明していた。