不妊治療のうち、卵子や精子を体外で受精させる生殖補助医療で、今や国内新生児の27人に1人が誕生している。子どもを望む男女が頼るこの医療には、医師とは別に、胚培養士(エンブリオロジスト)と呼ばれる技術者が大きく関わっている。受精卵を培養し胎児の元となる「胚」にまで育てる極めて重要な部分を担いながらも、目立たない胚培養士の姿を通し、不妊治療の今を追う。 午前7時すぎ、俵IVFクリニック(静岡市駿河区)。顕微鏡や作業台など専門機器が並ぶ早朝のラボ(培養室)で、手術着姿の胚培養士が採卵の準備を進めていた。不妊治療専門の同クリニックでは、8人の胚培養士が年間約2500件の生殖補助医療に携わっている。 <採卵は、排卵寸前にまで育った女性の卵巣から卵子の入った卵胞を取り出す手術。高度な不妊治療に臨む場合、成熟した卵子が採れないと、次のステップに進めない。質の良い卵子をできるだけ多く得るため、患者は何日