〈前編〉 ギリギリ間一髪での生還「もう消えてしまいたい」と富士の樹海で自殺をしようとした、なおさん(48)。森の奥のほうまで進んで焼酎を飲み始めると、持っていたガラケーが鳴った。「こんな樹海でも電波が入るんだ」と思いながら出ると、母親だった。 何年も連絡していなかった母親からの突然の電話に驚きながら、なおさんは自分の状況を説明する。 「いま樹海にいて、死のうとしているんだ」 母親はビックリして言葉を失った後、泣きながらこう訴えた。 「やめなさい! 借金も私がなんとかするから、とりあえず樹海から出なさい」 なおさんは母親の再婚相手と折り合いが悪く、家を追い出された経験がある。すぐには戻る決心ができなかったが、考えているうちに「もう一回チャンスがあるなら、試してみようかな」という気持ちになり、夜が明けるのを待つことにした。 「寝ようと思ったけど、寒すぎて眠れないんすよ。11月半ばで雪は降ってな