「東京は土地でも何でも世界一高い」といわれたのも今は昔、物価も賃金も安い国となりつつある日本。いつの間にか物価上昇を続ける諸外国との乖離(かいり)は進み、都内で最も富裕層が多いとされる東京・港区の平均所得者ですら、米サンフランシスコの基準で言えば「低所得者」と分類されることに――。『 安いニッポン 「価格」が示す停滞 』(日本経済新聞出版)より抜粋する。 「日本の賃金水準がいつの間にか経済協力開発機構(OECD)の中でも相当下位になっている」 2021年1月末、今年の春季労使交渉のキックオフとなる労使トップの会合で、経団連の中西宏明会長はそう語った。 この「いつの間にか」という表現に、うなずく読者もいるかもしれない。 だが日本が成長を見失ったこの30年の間、ずっと国内の賃金や価格は足踏みしてきた。 G7で最も平均賃金が低い国 今や日本の平均賃金は主要7カ国(G7)で最下位だ。 経済協力開発