8月24日に東京電力が福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を開始し、中国がこれに水産物全面禁輸措置などで強く反発している。おりしも10日に中国団体旅行が解禁されたばかりで、インバウンドの本格回復が期待される中、業界関係者は「また逆風が来たか」「訪日中国人はもう来なくなるか」との懸念を募らせている。実際、筆者はこの2週間で3回講演や取材に応じたが、この質問を毎回受けた。 そこで本稿では、中国の生活者がなぜ「処理水」に強く反応しているかについて、彼らの深層心理に迫り、インバウンド業界が持つべき視点を提供したい。 「見えない不安」に追われる人々 インバウンド戦略を練る際には、まず中国で暮らしている人々がどういう生活をしているのかを知ることが重要である。なぜなら現代中国人の多くはさまざまなストレスにより不安を抱いているからだ。 38歳の男性Aさんは北京で暮らしているが、出身は北西部の小さな町だ。
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