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ブックマーク / d.hatena.ne.jp/JD-1976 (23)

  • 消費税シフト・リターンズ - 事務屋稼業

    法人税減税と消費税増税ってバーターですよね、という話はよく聞かれるところだ。昨日もtwitterでそのような意味合いのつぶやきを見かけたので、ふとぐぐったら、こんな論文が見つかった。著者は関口智氏。 戦後日の法人税制の分析視角 http://ritsumeikeizai.koj.jp/koj_pdfs/59618.pdf 「はじめに」から引用する。 稿の焦点は,国際比較の視点をふまえつつ,戦後日の法人企業の特色と法人税制との関係を考察することにある。特に留意するのは,日の法人企業の国際比較からみた特徴と法人税の関係,所得税減税のメカニズムと法人税との関係,一般消費税導入プロセスと法人税との関係である。なお,稿で対象とする期間は,主としてシャウプ勧告に基づく税制改正の行われた1950年以降から1980年代中盤までとすること,対象法人は主として法人税の大半を納付している大企業であるこ

    nizimeta
    nizimeta 2015/09/19
  • ア・モデル - 事務屋稼業

    ESRI Discussion Paperより。 短期日経済マクロ計量モデル(2015年版)の構造と乗数分析 http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis314/e_dis314.pdf 論では、なにかと話題になる経済政策の乗数について、最新のシミュレーションが実施されている。詳細は現物にあたっていただくとして、概要のみ抜粋引用いたしましょう。 1) 公共投資の拡大 実質GDPの1%相当の公共投資の継続的な拡大は、実質GDPを1年目1.14%、2年目以降も概ね1%程度拡大させる。乗数の大きさは金融政策のスタンスにも依存しており、政策反応関数を短期金利一定の仮定で置き換えると、乗数は1.21%〜1.32%にまで拡大する。 2) 所得税減税 名目GDPの1%相当の個人所得税減税(継続減税)は実質GDPを拡大させる(1年目0.30%、2年目0.37

    nizimeta
    nizimeta 2015/01/23
    “DSGE型モデル、VARモデル、伝統的なマクロ計量モデルのそれぞれにおいて、現実経済をより的確に描写する試みを今後も継続し、的確な診断のためにそれらを目的に応じて使い分けるだけの柔軟性が求められている”
  • いなかのじけん - 事務屋稼業

    総研にて、研究員の小方尚子氏が興味深いレポートを執筆している。 地域的バラツキが広がる個人消費、その背景と課題 http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/7765.pdf 概要はこうだ。 ◆年4月の消費税率引き上げ以降、個人消費が弱い動きを続けており、とりわけ地方の消費の不調が顕著となっている。そこで、2011年以降の個人消費における地域的バラツキの実態を、ミクロの世帯ベース、マクロの地域全体の消費市場に分けて整理し、消費回復に向けた課題を考えてみた。 ◆地方の消費低迷の主因として世帯当たり収入の伸び悩みが指摘できる。この背景として、足許の景気拡大局面で、大都市に多く立地する大企業で賃金引上げの動きが先行したことが挙げられる。もっとも、影響としては、一人当たりの賃金の増加よりも都市部で急速に進んだ共

    nizimeta
    nizimeta 2014/12/11
  • タイム・イズ・マネー - 事務屋稼業

    RIETIにて、研究プロジェクト「通商産業政策・経済産業政策の主要課題の史的研究」の一環として、安田武彦氏が論文を発表している。 中小企業政策情報の中小企業への認知普及—小規模企業を対象にした考察— http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/14j049.pdf 小生、最近は概念の空中戦よりもこういう小回りの利いた実証分析のほうが好きだ。 まずは要旨である。 我が国において中小企業に対してはきめ細かな支援政策が講じられている。稿はこうした中小企業支援施策の情報がどの程度、中小企業、特に昨年の中小企業基法改正によって施策の重点化の対象となった小規模企業に認知されているのかについて独自の調査で概観するとともに、認知度を決定する要因を分析するものである。 調査の結果からは、2000 年代の主要中小企業施策について、総じて施策認知度が低いこと、施策認知

    タイム・イズ・マネー - 事務屋稼業
    nizimeta
    nizimeta 2014/11/14
    “不確実性を完全に拭うことができないという性質を本来的に有する設備投資や研究開発に係る資金需要を、論理的文書で経済的に意味のあるものとするのが金融機関の能力”
  • 非ケインズ効果どこ行った - 事務屋稼業

    タイトルは軽い因縁であって、深い意味はない。 内閣府のマンスリー・トピックスにて、消費税増税に関するレポートを大坂恭子・荻島駿両氏が共同で執筆している。 消費税率引上げ後の個人消費の動向 http://www5.cao.go.jp/keizai3/monthly_topics/2014/1021/topics_036.pdf まずはお約束通り概要。 1.我が国の個人消費をみると、消費税率引き上げ後も、基調としては持ち直しの動きが続いているものの、夏場の天候不順の影響などもあり、最近では足踏みがみられる。稿では、消費税率引上げ後の消費の持ち直し局面について、品目・業種ごとに特徴を確認する。また、最近の個人消費の足踏みの背景について、所得や世代といった階級毎の動向を考察していく。 2.2014年1−3月期の消費の伸びと4−6月期における落ち込みの大きさを前回1997年4月の消費税率引上げ前後

  • 上場企業の奇妙な冒険 - 事務屋稼業

    財務省広報誌「ファイナンス」の「シリーズ日経済を考える」に、折原正訓研究官がなかなかおもしろい論文を寄稿している。 上場企業と非上場企業の設備投資 法人企業統計を活用した記述統計に基づく分析 http://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2014_04.pdf 目を引いたのは以下の記述だ(p.83)。 グラフ2は、上場企業と非上場企業の設備投資比率に関する明確な違いを示している。すなわち、すべての年度において、非上場企業の方が上場企業よりも設備投資を活発に行っていることが見てとれる。全期間を通じた年度の設備投資比率の平均値は、上場企業については約4.3%、非上場企業については約6.9%である。 なぜ上場企業の設備投資比率は、非上場企業の設備投資比率よりも低いのであろうか。この違いに関する説明として、Asker, Farre-Me

    nizimeta
    nizimeta 2014/09/16
    “上場企業の経営者が現在のキャッシュフローを増やすことで、企業の将来のキャッシュフローに対する投資家の期待を押し上げている…現在のキャッシュフローを増やす方法として、設備投資を控えることが考えられる”
  • 行動する総裁―『ルワンダ中央銀行総裁日記』 - 事務屋稼業

    やあ、年も明けてしまいましたね。今年も読んだの感想を中心に、やくたいもないことをダラダラと書いていこうかと思いますので、御用とお急ぎでない方はヒマつぶしにでも寄っていってくださいませ。twitterのほうもつづけるつもりです。どっちにしろ、興が乗らないかぎりは沈黙してますが。 というわけで――年の一発目は、服部正也氏の『ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』の感想でございます。 すでに伝説の名著というあつかいの書。半世紀前の1965年、IMFのお誘いで、アフリカの小国ルワンダの中央銀行総裁として派遣された日銀行マン服部氏が、ルワンダの経済再建をめざして奮闘した、6年間にわたる自叙伝だ。 中央銀行総裁といっても、服部氏が考えたり決めたりしたのは、国債をいくら買うかとか政策金利を何パーセントにするかという、ちまちました話ではない(もちろん先進国ではそれだもだいじな案件ですが)。目前に迫った

    行動する総裁―『ルワンダ中央銀行総裁日記』 - 事務屋稼業
    nizimeta
    nizimeta 2014/08/16
    “「ファイナンス」とおなじような意味合いで使われているようだが、動詞になっているのがちょっと新鮮だった。そうだよなあ、お金を融通するんだから、金融ってのはまさしく行動することなんだよなあ”
  • あくまでも押井守のパトレイバー - 事務屋稼業

  • やさしい左翼のための経済学―『不況は人災です!』 - 事務屋稼業

    熱い。なんとも熱い。 『不況は人災です! みんなで元気になる経済学・入門』と題した書で、松尾匡氏はていねいな語り口ながらも、熱い思いのたけをぶちまけている。といっても、怒り狂って罵詈雑言を書き散らし、著者・読者ともにただ溜飲を下げたいだけのようなではない。 著者の立場は首尾一貫している。それはこうだ(竹森節の毒が抜けきらないのだけれど、どうかご容赦されたい)。 まず、「失われた十年」「実感なき景気回復期」をふくむここ二十年の経済停滞を、政府与党および日銀の失政と、その失政に対して最適化行動をとった財界の責任だとする(ここで「財界」を指弾することに抵抗を感じる読者はいるだろうけれども、今はおいといて)。この経済失政のせいで、失業はふえ、賃金も上がらず、「格差社会」ならぬ「貧困化社会」が到来することになってしまったのだ。不況を「人災」と呼ぶ所以である。 しかるに、来ならばこうした失政をだ

    やさしい左翼のための経済学―『不況は人災です!』 - 事務屋稼業
  • 少子化の総合的分析と政策の提言―『少子化論』 - 事務屋稼業

    良書に出会うとうれしくなる。うれしくなると、140字では飽き足らず長文をしたためたくなる。松田茂樹氏の『少子化論』は、久方ぶりにそんな思いにかられた一冊だった。ちなみにポストの記事名は、書の没タイトルから拝借した。 日少子化対策がはじまってから、およそ二十年。保育所の拡充、育児休業や短時間勤務といった仕事と子育ての両立支援など、政策は一歩づつ前進してきたにもかかわらず、出生率格的な回復にはいたっていない。その理由のひとつとして、少子化に取り組む専門家たちによってつくられた「少子化論」の側に問題があったのではないか、と松田氏は指摘する。 ありていにいえば、巷間流布されている少子化論は一定の方向にかたよっていて、そのかたよりのせいで少子化の全体像がみえづらくなってしまっており、もっと質的な問題がなおざりにされている、ということだ。 こうした問題意識に立ち、松田氏は過去から現在にいた

    少子化の総合的分析と政策の提言―『少子化論』 - 事務屋稼業
  • 流動性の罠では消費税増税は有効需要を減少させる - 事務屋稼業

    という内容の論文を、沖縄国際大学の松崎大介氏が2005年に発表している。 物価硬直的な経済における流動性制約と消費税 http://ir.okiu.ac.jp/bitstream/2308/275/1/13405497_13_matsuzaki_daisuke.pdf 【概要】 稿では,流動性制約下における消費税政策の有効需要に対する影響について考察する.特に,現在においては物価調整が緩慢である一方,将来においては十分な調整がなされるため完全雇用が実現するという経済を考える.稿における結論として,将来における消費税率の変更は,有効需要に対し何ら影響を与えないが,物価調整が緩慢な今期における消費税率の減少(増加)は,常に今期の有効需要を増大 (減少)させることを示した. もちろん私ごときが申すまでもなく、経済モデルの常として、さまざまな仮定に依存した結論であることには注意が必要だろう。

    nizimeta
    nizimeta 2013/05/28
    “将来における消費税率の変更は,有効需要に対し何ら影響を与えないが,物価調整が緩慢な今期における消費税率の減少(増加)は,常に今期の有効需要を増大 (減少)させることを示した”
  • サミュエルソンとアカロフの自然失業率懐疑論 - 事務屋稼業

    昨日ちょっと脇においといた話題について、『アニマルスピリット』第9章を援用しつつ書いてみよう。サミュエルソンが自然失業率理論のどこに疑問を感じていたのか、そして、アカロフはその疑問をどのように受けとめて、自分たちのアニマルスピリット理論に組みこんだのか、という話だ。ちなみに拙ブログの『マクロ経済学』要約集でいえば、第15章の補足というか反証ということになる。 サミュエルソンは1964年の春、MITで金融理論の講義を行なった。『アニマルスピリット』の著者のひとり、ジョージ・アカロフもこの講義を受けていた(これについてはokemosさんのすばらしいエントリがあるので、そちらも参照のこと)。 講義において、サミュエルソンはレイモンド・ソールニアが提案したアイデアを紹介した。そのアイデアとは、短期的には高いインフレとひきかえに低い失業率を実現できるかもしれないけれども、インフレ期待が上がることにな

    サミュエルソンとアカロフの自然失業率懐疑論 - 事務屋稼業
  • ウッドフォードが語る「異次元緩和」 - 事務屋稼業

    4月28日の日経新聞に黒田日銀のいわゆる「異次元緩和」、すなわち「量的・質的金融緩和政策」について、マイケル・ウッドフォードのインタビュー記事が掲載されている。以前のインタビュー(こちらを参照)に関連して、なかなか興味深い論点を含んでいるので、備忘録がてら抜粋引用させていただく。 「黒田流緩和、「私ならそうしない」 米第一人者の懸念 http://www.nikkei.com/markets/column/ws.aspx?g=DGXNMSGN27016_27042013000000&df=3 ――過去の日銀の政策の問題点について、どう考えますか。 「これまで日銀は緩和的な政策が将来にわたり続くと断言することに非常に慎重だったと思う。多くの劇的な政策がとられたが、それらが効果を生むまで続くという点が強調されていなかった。例えば最初の(2001〜06年までの)量的緩和にしても日銀のバランスシー

  • 成長基盤を強化するって、どうすれば―『中央銀行は闘う』より - 事務屋稼業

    日銀 融資促進で新制度検討へ6月11日 6時50分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110611/t10013459101000.html日銀は、来週開く金融政策決定会合で、東日大震災の復旧復興や経済成長を後押しするため、担保となるような不動産がなく融資を受けにくい企業にも資金が行き渡るような新たな制度の導入を検討する方針です。日銀は、今月13日から2日間、金融政策決定会合を開き、震災の復旧復興を進め、経済を回復軌道に乗せていくため、金融面からの支援策について意見を交わします。この中では、去年から実施している環境や福祉、エネルギーといった成長分野に極めて低い金利で資金を貸し出す取り組みを拡充する方向で議論することにしています。具体的には、担保となるような不動産がなく、融資を受けにくい中小企業などにも資金が十分に行き渡るよう企業の手元にある商品の在庫などを

  • 三千世界の鴉を殺し―『ユーロ破綻 そしてドイツだけが残った』 - 事務屋稼業

    東日大震災以後は『国策民営の罠』等で原発問題に取り組んできた印象の強い竹森俊平氏だが、新著はひさびさに来のフィールドに帰還した感がある。 「ユーロ」という通貨政策が政治的にも経済的にも無理筋の企てだったという視座は、『中央銀行は闘う』から一貫するものだ。無理を通せば道理が引っ込む。道理の消えた世界が呼び寄せるのは、もちろん混沌にほかならない。 もっとも、これは著者独自の視点というわけではなく、たとえばクルーグマンの『さっさと不況を終わらせろ』でもそうした考えは示されている。書の大半は、ユーロのどこがどう無理筋なのか、その無理を通した(通している)ことによってどのような道理が引っ込められ、そしてどんな混沌たる危機が起きた(起こっている)のか、という記述に割かれているので、くわしくは直接あたられたい。 しかし、竹森氏の思考がおもしろいのは、今そこにあるユーロ圏の経済危機を前にして「いった

  • ウッドフォード・インタビュー - 事務屋稼業

    日の日経新聞に「FRBは成長目標明示を」と題したマイケル・ウッドフォードのインタビューが掲載されている。おもしろいので、備忘録として以下に引用させていただく。 ——緩和手段の一つとして、ゼロ金利を解除するメドを2015年中に先送りする案が取り沙汰されます。 「現在は『14年終盤まで』としている継続期限をその通り実行するとの確約はなく、15年にしたところで緩和効果の点からはほぼ意味をなさない。市場はFRBの見通しが一段と悲観的になったと考え、消費者心理に悪影響を与えるだけだ」 「時間軸の効力を高めるには、金融引き締めに耐えうる将来の名目国内総生産(GDP)の伸びや物価水準などを設定し、そこに至る道筋を示す必要がある。あまり信用されていない時期を設けるよりも、目標の米成長率に達するまでは短期金利を上げないという方針をはっきりさせたほうが緩和効果が大きい」 ——8月の雇用統計悪化で、量的緩和第

    nizimeta
    nizimeta 2012/09/11
    “(略)物価水準などを設定し、そこに至る道筋を示す必要がある。あまり信用されていない時期を設けるよりも、目標の米成長率に達するまでは短期金利を上げないという方針をはっきりさせたほうが緩和効果が大きい”
  • 十年一日の如し - 事務屋稼業

    7月31日、日銀HPにて2002年1月から6月の金融政策決定会合議事録が公開された。 金融政策決定会合議事録等(2002年1月〜6月開催分) http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2002/index.htm 当時の議論をうかがい知ることができる貴重な資料だけれども、ここでは2002年3月19日、20日の議事録から、一部で話題を呼んだ発言を備忘録として引用しておく。なお、引用元はこちら(PDF)である。 p.95より。 山口副総裁 一つ二つコメントがあるが、一つは中原眞委員が言われたインフレ・ターゲティングの問題で、政策のフレームとして政府と共通の目標を共有することには、それなりに意味があるのではないかという趣旨のことを言われたと思う。しかし問題はやはり、中原眞委員も言われたことだが、仮にそういう目標を共有したとして、どうやってそれを実

  • クルーグマンの信念―『さっさと不況を終わらせろ』 - 事務屋稼業

    言わずと知れたポール・クルーグマンの新刊である。 主張はいたってシンプルなものだ。いわく、不況のときに緊縮財政するな。政府は財政赤字なんか気にせずに拡張的な雇用創出政策をやれ。中央銀行はそれを支援しろ――これだけ。 で、この主張を補強するために、金融危機の前史から経緯をふりかえり、アメリカ、ユーロ圏、イギリスなどの現状を概観し、流動性の罠に関する不況の経済学をわかりやすく解説し、清算主義を批判する。とりわけ不況を「道徳劇」として見る発想をくりかえし批判している。 おおよその内容は「道草」で翻訳されているコラムとかぶるものが多いので、ぶっちゃけ新味のある話はない。しかし、こうしてまとまったかたちで読めるのはよいことだろう。とくに私のような紙のフェチには、じつにじつにありがたい。 どうでもいいことだけれども、一部で議論を呼びそうだなと思ったのは、次のくだり(p.143)。 フリードマンの取っ

  • 貧乏人に足りないもの―『貧乏人の経済学』 - 事務屋稼業

    バナジー=デュフロ『貧乏人の経済学』はとてもおもしろいだ。ネットにはすでにすぐれた書評がいくつも出ているし、例によって訳者解説が充実しているので、ここでは個人的に目を引いた箇所を紹介させていただく。 「第9章 起業家たちは気乗り薄」で、著者たちはこう言う。マイクロファイナンスは途上国の貧乏人の生活向上にまちがいなく役立つものだけれど、それを主唱する人々が喧伝するほどには劇的な成果をあげるものではない。マイクロファイナンスは決して貧困撲滅のための「銀の銃弾」ではないという(だからダメだ、と言っているわけではないことに注意)。 それはなぜか、という謎解き自体もおもしろいのだけれど、ちょっと割愛する。結論部分からポイントのみ引用するので、詳細はぜひ文にあたっていただきたい。 貧乏人の事業はしばしば、特定の起業衝動の反映というよりは、もっと通常の雇用機会がないときに、仕事を買うための手段でしか

    貧乏人に足りないもの―『貧乏人の経済学』 - 事務屋稼業
  • 消費税シフトについて - 事務屋稼業

    しばらく棚上げになっていた消費税引き上げに関する議論が、またぞろ復活してきたみたいですね。この不況下に増税したらどうなるかは火をみるより明らかだと思うんですが、財政規律という錦の御旗はよほど輝かしくみえるようで。 ところで、目下勉強中の八田達夫氏『ミクロ経済学』にも、消費税について検討したくだりがあります。2巻の終章の一節。八田氏といえば強力な消費税批判者として有名なので、入門的教科書の記述としてはいくらか割り引いて読まなきゃいけないのかもしれませんけれども、貴重なご意見であることはまちがいない。ここでご紹介させていただきます(じつはまだ1巻の途中を読んでる最中なんですが)。 なお、おことわりしておきますが、カギカッコ内は書からの引用とはかぎりません。 以下、ことばをあらためます―― 八田氏はまず、1987年以降、所得税の累進性がおおはばに引き下げられてきた事実に注目する。これが格差拡大

    消費税シフトについて - 事務屋稼業