彼らはとてもサッカーがヘタだ。どれぐらいヘタかというと、プレー中のシーンが映し出されたときに客席から失笑が漏れてしまうぐらい、ヘタだ。ボールはまるで足についていないし、パスは3本とつながらない。技術的には日本人の小学生のほうがよっぽどうまいかもしれない。 それもそのはず、彼らは“世界最弱”の代表チームなのだ。アメリカ領サモア代表――。公式戦30戦で200ゴール以上の失点&全敗、10年以上に渡りFIFAランキング最下位。極めつけは2001年にFIFAワールドカップ予選でオーストラリア代表に喫した0対31の歴史的大敗だ。国際Aマッチ史上最多点差という不名誉なものだった。 そんな“最弱軍団”がオランダ人の熱血監督と共にブラジルW杯予選で初勝利を目指す。これはサッカー界の底辺中の底辺の物語だ。8万人の大観衆も、ネイマールやメッシの華麗なフェイントも、高度に組み立てられたゲームプランも、そこにはない