昔も今も芸術の都には、優れた芸術家がたくさん集まってきます。 しかしルネサンス時代の芸術家は、本連載Vol.1でご紹介したとおり、現代で考えればアーティストというよりビジネスマンでした。食い扶持は、権力者や市民からの作品の注文! 競合相手がうじゃうじゃいる芸術の都では、注文一つ取るのも一苦労です。まして名誉ある大きな注文となれば、競争率は半端じゃない。それでも、そんな超難関をなぜかクールに突破していく人は、いつの世にもいるもの。 ヴェネツィアの画家ティントレットもそんな一人でした。 ルネサンス期ヴェネツィアの美術を支えた人といえば、貴族たちはもちろんですが、大小さまざまな「町内会」を忘れるわけにはいきません。こうした会は当時、同信会(スクオーラ)と呼ばれ、同業の人たちや出身地を同じくする人たちが集まって、病人に施しをしたり聖人のお祭りを主催したりと、宗教団体にして社交クラブのような活動をし