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ブックマーク / realsound.jp (13)

  • 『あなブツ』に2022年に出会えたことに感謝 “幸せは自分の手で掴むもの”という教え

    「毎日宅配すんねん。雨が降っても雪が降っても、コロナが来ても。毎日毎日」 つまずいて転んで這いつくばって、立ち上がって、自分の足で歩き出した亜子(仁村紗和)がついに辿り着いた境地。去る9月29日、NHKの「夜ドラ」『あなたのブツが、ここに』(以下あなブツ)が最終回をむかえた。いまだかつてないほどコロナ禍の現実に肉迫しながら、あざとい「センセーショナルさ」を一切排除し、登場人物たちの「日常」を粘り強く描ききった傑作だった。 「人の営み」や「生活」が極限まで「自然に見える」フィクションだった。「神は細部に宿る」というが、たとえば第6話、亜子が荷物を運んだ得意先のさなえ(藤田千代美)の部屋には、手作りの「お薬カレンダー」と「することメモ」が貼ってある。それがほんの数秒映ることで、さなえが独居老人であること、離れて住む家族がそれを貼っていったこと、近頃さなえの物忘れが進行していることがわかる。ほん

    『あなブツ』に2022年に出会えたことに感謝 “幸せは自分の手で掴むもの”という教え
  • 山崎まどかの『一度きりの大泉の話』評:萩尾望都が竹宮惠子に向けていた眼差しとその痛み

    1970年から1972年まで竹宮惠子と萩尾望都が同居し、そこに同世代の少女マンガ家「花の24年組」を中心とするメンバーが出入りして「大泉サロン」と呼ばれた借家。それは少年マンガにおける「トキワ荘」と並ぶ、少女マンガ文化におけるひとつの伝説だった。 萩尾望都の側から見た残酷な事実 『少年の名はジルベール』(小学館) 竹宮惠子が自伝『少年の名はジルベール』(小学館/2016)で「大泉サロン」時代の話を書くと、この伝説には新たなベクトルが加わり、より神話性が強まっていった。接近し過ぎた若い創作者同士の思わぬ齟齬。竹宮惠子はそれを天才・萩尾望都への自分の一方的な嫉妬として描いている。 萩尾望都の語り下ろしである『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)は『少年の名はジルベール』そのものというよりも、竹宮のに対する反響で自分が被ったことへの返答として書かれている。これは単体で読む彼女の自伝というよりも

    山崎まどかの『一度きりの大泉の話』評:萩尾望都が竹宮惠子に向けていた眼差しとその痛み
  • 『大豆田とわ子と三人の元夫』の劇伴と主題歌はなぜリッチなのか ドラマとの相関関係を紐解く

    2021年4月クールが幕を開け、各局のテレビドラマが次々と放送開始されている。今期も数々の話題作が生まれているが、その一つが、松たか子主演の『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)だ。脚家・坂元裕二の新作というだけでも引きは十分だが、2017年に彼とタッグを組み『カルテット』を大成功に導いた佐野亜裕美がプロデュースを手掛けており、さらに、松たか子が演じる大豆田とわ子(三度結婚し、三度離婚を経験)の元夫を、松田龍平、角田晃広(東京03)、岡田将生が演じる。このような座組みだけを見ても、今作が単なる話題作を超えた傑作となり得るピースがすでに揃っていたと言えるが、放送開始後、大きな注目を集めた要素がある。それが、今作を彩る「音楽」だ。今回は、『大豆田とわ子と三人の元夫』の劇伴と主題歌についてまとめていきたい。 劇伴 今作の劇伴を担当したのは、坂東祐大。現代音楽からポップスまで幅広い領域で活

    『大豆田とわ子と三人の元夫』の劇伴と主題歌はなぜリッチなのか ドラマとの相関関係を紐解く
  • 橋本愛、『THE FIRST TAKE』が話題に 「木綿のハンカチーフ」の物語を紡ぐ祈るような歌声

    世界に繊細に反応し続けることを強いられる今、人と繋がることを、これほど思い焦がれた季節はなかったかもしれない。そんな日々を慰めるように、橋愛が『THE FIRST TAKE』で歌った「木綿のハンカチーフ」が昨年のクリスマスに投稿された。思わず、涙を拭った。その歌声と表現力は多くの人の心に届き、2021年2月時点で260万回再生を超える。そして、2月19日には『ミュージックステーション3時間SP』(テレビ朝日系)にて地上波で初披露されることになり、音源の配信も決定した。 橋愛 写真集 『あいの降るほし 』 『THE FIRST TAKE』は2019年11月よりスタートしたYouTubeチャンネル。様々なアーティストたちが、「一発撮り」で歌声を披露するというまたとない試みが反響を呼んでおり、DISH//北村匠海の「」やLiSAの「紅蓮華」は1億回再生を突破した。橋は、武部聡志の美しいピ

    橋本愛、『THE FIRST TAKE』が話題に 「木綿のハンカチーフ」の物語を紡ぐ祈るような歌声
  • 伊藤沙莉の演技はなぜ心に刺さるのか 荒唐無稽な『いいね!光源氏くん』を成立させる“普通力”

    今、20代の女優で1番上手いのは伊藤沙莉だ。 と、断言したくなるほど彼女の演技は刺さる。ハズレがない。コメディからシリアスまで両方成立させる技術力と、すぐそこのコンビニで買い物をしているような親近感。場面ごとにクルクル変わる表情を見ているといつの間にか感情移入し、全力で応援してしまう。 そんな伊藤が自身の持ち味全開で演じているのが、NHK総合・よるドラ枠でオンエア中の『いいね!光源氏くん』藤原沙織役だ。 東京・月島あたりのマンションで1人暮らしをしているメーカー勤務のOL・沙織のもとに、ある晩突然、光源氏(千葉雄大)が現れる。あまりの出来事に混乱しながらも事態を受け入れ、光をさまざまな場所に連れ出したりSNSの使い方を教えたりしながら、現代のライフスタイルを教える沙織。ともに暮らすうち、光に惹かれていく沙織だったが、そこに光のライバル・頭中将(桐山漣)までタイムスリップ(?)してきてイケメ

    伊藤沙莉の演技はなぜ心に刺さるのか 荒唐無稽な『いいね!光源氏くん』を成立させる“普通力”
  • 『チャンネルはそのまま!』が傑作になった理由 芳根京子キャリア最高の好演がもたらすユニークさ

    北海道のローカルテレビ局HTBの開局50周年を記念して製作されたドラマ『チャンネルはそのまま!』が、2019年日民間放送連盟賞のテレビ部門でグランプリを受賞したことを受け、1月5日からテレビ朝日をはじめ全国各局で放送される。これまでHTBを皮切りに全国各地のローカル局を転々としながら放送されており、それに加えてNetflixでのグローバル配信と、まさに娯楽の多様化の中でテレビドラマが置かれている複雑な現状を体現してきたかのような流れを歩んできた作。この機会に改めて、その作品としての魅力をまとめてみたい。 昨年夏クールにTBS系列でドラマ化された『Heaven? ご苦楽レストラン』で知られる漫画家・佐々木倫子の同名コミックを原作にした作の舞台は、HTBを彷彿とさせる(現に社屋の外観は南平岸にある旧社屋が使われている)北海道のご当地テレビ局「北海道ホシテレビ」。そこに何年かぶりの“バカ枠

    『チャンネルはそのまま!』が傑作になった理由 芳根京子キャリア最高の好演がもたらすユニークさ
  • 安達奈緒子の3作品が高評価! “日常系”が増え始めた2019年を振り返るドラマ評論家座談会【前編】

    2019年も、各局、各配信サービス等から多種多様なドラマが放送された。リアルサウンド映画部では、1年を振り返るために、レギュラー執筆陣より、ドラマ評論家の成馬零一氏、ライターの西森路代氏、田幸和歌子氏を迎えて、座談会を開催。前編では、今年『きのう何べた?』『サギデカ』『G線上のあなたと私』という3の作品を送り出した脚家の安達奈緒子の作家性に注目。さらに、YouTubeからの影響を感じさせるテレビ東京の深夜ドラマや、『あなたの番です』のヒットとともに定着した「考察」というドラマの新たな楽しみ方から、2019年の日のドラマシーンについて語り合った。 なお、後日公開予定の後編では、ドラマにおける男女の描き方や、『わたし、定時で帰ります。』などのお仕事ドラマにおける価値観の衝突、そしてNHK朝ドラについて語っている。 2019年は安達奈緒子の年 ーーまずみなさんの2019年のドラマベストか

    安達奈緒子の3作品が高評価! “日常系”が増え始めた2019年を振り返るドラマ評論家座談会【前編】
  • 大友良英インタビュー【前編】 NHK大河ドラマ『いだてん』秘話と劇伴がもたらす発見

    宮藤官九郎脚NHK大河ドラマ『いだてん ~東京オリムピック噺~』の劇伴を収録した『大河ドラマ「いだてん」オリジナル・サウンドトラック 前編』がリリースされた。また、同作の劇伴を務める大友良英がこれまでに手掛けた映画・ドラマの劇伴を収録した『GEKIBAN 1 -大友良英サウンドトラックアーカイブス-』も発売。『あまちゃん』『トットてれび』などに加え、資生堂「マキアージュ」のCMソング「LADY-EMBELLIE」やNHKのラジオ番組『すっぴん!』のテーマ曲なども作で初CD化となった。 今回リアルサウンドでは、大友良英に『いだてん ~東京オリムピック噺~』をはじめとする劇伴がどのように作られてきたのかを中心にインタビュー取材を行った。前・後編の2回にわたってお届けする。(編集部) 「またぐ音楽」をどういうふうに作っていったらいいかを考えた ーー『いだてん』、この取材の時点では金栗四三た

    大友良英インタビュー【前編】 NHK大河ドラマ『いだてん』秘話と劇伴がもたらす発見
  • Appleの“2018年ランキング”から見えてくるものとは? ジェイ・コウガミに聞いた

    2018年も終盤に差し掛かり、各プラットフォームが年間のデータなどを発表するなか、Appleも2018年のランキングを発表した(https://www.apple.com/newsroom/2018/12/apple-presents-the-best-of-2018/)。 アプリやゲームApple Music、ムービー、Bookなど、様々なランキングが発表されているが、このラインナップから読み解けるものとはなんだろうか。デジタルジャーナリストのジェイ・コウガミ氏は「Appleがアプリとゲームに分けてランキングを発表していることに注目したい」と述べる。 「今回のランキングは、iPhoneiPadがいかにゲームコンソール、配信プラットフォームとして大きなものになっているのか、ということを象徴したものだと思います。大きいのは、これまでのパズルゲームやアプリだけで楽しめるものとは違い、『PU

    Appleの“2018年ランキング”から見えてくるものとは? ジェイ・コウガミに聞いた
  • 宇多田ヒカル、cero、tofubeats……2018年のJ-POPにおける“ポリリズム”の浸透

    宇多田ヒカル、cero、tofubeatsをはじめとして、2018年の注目作を見渡してみると、日のポップミュージックの中にある興味深い現象が見て取れる。ポリリズムの浸透だ。 2007年にリリースされたPerfumeによる同名のヒット曲を通じてこの言葉を記憶している人も多いだろう。ひとつの曲のなかに複数の拍子(たとえば3拍子と4拍子など)を重ねる技法を指す言葉で、Perfumeの曲にもポリリズムが登場するパートがある。とはいえ、それもアレンジの中心であるというよりは、ギミックに近かった。近年、とりわけ2018年に入ってからは、ポリリズムを中心においた楽曲が目立つようになっている。 その背景には、このところジャズやラテン音楽の分野において、リズムをめぐる実験が先鋭化していたことがある。先日RealSoundに掲載されたインタビューで冨田ラボが指摘しているように、2000年代を通じてレフトフィ

    宇多田ヒカル、cero、tofubeats……2018年のJ-POPにおける“ポリリズム”の浸透
  • 細野晴臣『HOSONO HOUSE』なぜ海外で再評価? “観光音楽”がいま注目集める理由を考察

    ここ数年、70年代〜80年代の日のポップミュージックが海外から注目されている。昨年3月にはアメリカ・シアトルのレーベル<Light In The Attic>が日の名曲をリイシューする“Japan Archival Series”を始動。第1弾の『Even a Tree Can Shed Tears: Japanese Folk & Rock 1969-1973』(2017年10月発売/CD4枚組)には、金延幸子「あなたから遠くへ」、加藤和彦「アーサー博士の人力飛行機」、はっぴいえんど「夏なんです」、そして、細野晴臣の「僕は一寸」などが収録されている。作はニューヨークタイムズで特集が組まれるなど(The Hidden History of Japan’s Folk-Rock Boom)、現地でもかなり大きな話題となった(この記事のなかで触れられている2014年の『Red Bull M

    細野晴臣『HOSONO HOUSE』なぜ海外で再評価? “観光音楽”がいま注目集める理由を考察
  • “共時性”を持ち“個人的な”作品を生む是枝裕和と坂元裕二 『万引き家族』『anone』の共通点を探る

    「盗んだのは、絆でした。」……映画『万引き家族』のポスターには、そんなキャッチコピーがつけられている。しかし、実際に映画を観たあと、ふと思い出したのは、「私を守ってくれたのは、ニセモノだけだった。」という、あるドラマのキャッチコピーだった。そう、今年の1月期に放送された、広瀬すず主演、坂元裕二脚のドラマ『anone』(日テレビ系)のキャッチコピーだ。 『anone』ポスター (c)日テレビ 身寄りのない少女が、ある女性との出会いをきっかけに、見ず知らずの人たちと“疑似家族”を形成していく物語。端的に言うならば、『anone』とは、そういうドラマだった。日雇いのアルバイトをしながらネットカフェで暮らす、天涯孤独な19歳・ハリカ(広瀬すず)、夫に先立たれたあと、娘とも絶縁状態にある60代の女性・亜乃音(田中裕子)、医師から余命半年であることを宣告され、店主を務めるカレーショップを畳んだば

    “共時性”を持ち“個人的な”作品を生む是枝裕和と坂元裕二 『万引き家族』『anone』の共通点を探る
  • 細野晴臣が表現した“知っているはずなのに知らない音楽”の奥深さ  『Vu Jà Dé』東京公演レポート

    約4年半ぶりのニューアルバム『Vu Jà Dé』のリリースに伴う全国ツアー『細野晴臣 アルバムリリース記念ツアー』の東京公演(11月15日/中野サンプラザ)。岩手県公会堂 大ホール公演に続くツアー2目となるこの日、細野は“知っているはずなのに、知らない”をテーマにしたアルバム『Vu Jà Dé』の楽曲をたっぷりと披露。ブギウギ、ジャズ、カントリー、ラテンなど20世紀の音楽を現代に蘇らせる素晴らしいライブを見せてくれた。 最初に登場したのはナイツ。塙宣之が『オー!マイ神様!!』(TBS系)で細野晴臣へのリスペクトを語るなど、以前から細野と交流がある彼ら。「今日は私の尊敬する細野さんのことを調べてきたんです。インターネットの“ヤホー”で」と、細野のキャリアを題材にした漫才を披露。「1969年にバンド“ほっぴいえんど”を結成し……」「“はっぴいえんど”ね。ホッピー飲み切ったみたいになってるから

    細野晴臣が表現した“知っているはずなのに知らない音楽”の奥深さ  『Vu Jà Dé』東京公演レポート
    norapodpro
    norapodpro 2017/12/16
    “細野晴臣が誘う、20世紀音楽への旅 京都・磔磔で至福のライブを見た”
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