第2次大戦後の東京。荒廃した街が人々の心にもたらしたものは何か――。東京在住の英国人作家、デイヴィッド・ピースさん(40)が、敗戦直後の東京で起こった三つの事件を題材にした東京三部作に挑んでいる。先月刊行された第1作は、「小平事件」を取材した『TOKYO YEAR ZERO(トーキョー・イヤー・ゼロ)』(文芸春秋)。翻訳作品としては珍しい「日本発、米英同時発売」という出版形態も話題を呼んでいる。 「東京には、隠された歴史があるのではないかと思った」。ピースさんは執筆の動機をこう語る。1994年に来日。直後に書店で手にとったサイデンステッカーの『立ちあがる東京』で数行だけ触れられていた小平事件に強く興味を抱き、作品を着想した。3年前、英国で「ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞」を受賞した『GB84』の翻訳権を得た文芸春秋の編集者に出会い、関連資料の翻訳などで協力を得られることになったことから