秋の陽射しは琥珀色をしていた。 そよぐ風が私の頬を優しく撫でながら、木々の葉をゆらゆら揺らしていた。 隣にいるあなたの髪は光にかざされ羽毛のように柔らかくふわふわ揺れていた。 触れたかった。 手で触れてその感触とあなたがそこにいることが現実なのだと知りたかった。 だが、私はただ眺めているだけであなたの髪に触れることが出来なかった。 私の手があなたの髪に触れると、健やかな天使の輪からぷわんぷわんと、わき出た胞子が四方八方へ飛び散って行くような気がして、手が震えるほど怖かったからだ。 あなたから広がる無数の網目をかいくぐっていけるほど、私の手は大きくはなかった。 私はそっとあなたの影に手を重ねてみた。 眩しい光りから逃れ、そよぐ風に吹かれ、その果てに落ちた胞子を拾うことは少しも怖くはなかった。 だが、そこからは何も生まれることなどなかったのだ。 *** 『胞子文学名作選』を読んだ。 胞子文学名