世界の主要中央銀行は、穏やかにインフレを高進させることが巨額の債務から逃れるうえで有益であることを認識すべきである。 原則的にいえば、インフレは債務問題を解決する公正な方法とはいえない。なぜならインフレになると債権者は価値が下落した通貨で返済を受けることになるからだ。だからインフレに頼らないで金融システムの欠陥を是正する方法を模索するべきである。しかし、銀行への資本注入や住宅ローン債務の保有者に対する直接的な支援など代替案を研究すればするほど、インフレ高進は問題解決を阻害するよりも助けになることが明らかになってくる。 現代の金融は、標準的な債務問題に対する取り組み方ではとても対処できないほど複雑な仕組みを作り出している。証券化、ストラクチャード・ファイナンスといった金融のイノベーションによって金融システムの中でさまざまなプレーヤーが結びついており、ある時点で一つの金融機関だけを取り出し