宮澤くんのとびっきり愚かな恋 (電撃文庫) 作者:中西 鼎 KADOKAWA Amazon 「恋愛感情なんてのはね、一時の気の迷いよ。精神病の一種なのよ」 ――『涼宮ハルヒの憂鬱』より 恋愛感情についてラブコメが抱える巨大な問題、それは「めんどくさい」に尽きるかもしれない。涼宮ハルヒ女史がなぜ孤高のヒロインである(かのように思える)のかはそのめんどくささやじとっとした重さをありえんくらいのおもしろ記述速度で語りの内部からからっと吹き飛ばし、世界的な規模で起こる激ヤバ改変イベントを「動機」ではなくほとんど「結果」のみ出力されたものとして記述するからだ。 このようにして、数々の事件において、探偵によってふりまわされるワトスンはその最終的な出力をあたかも「従うしかなかった」といいたげな消極的共犯関係として書き残す。つまり、キョンがしばしば口にする、 「やれやれ」 である。語りはこの一言で除湿され