美的価値とはなんぞやをめぐる、最新の研究です。*1 「美しい」「崇高である」「パワフルである」といった美的価値については、しばしばそれによって引き起こされる反応の観点から説明されてきた。すなわち、美しかったり優美だったりして美的に良いものとは、私たちに特別な快楽やら満足やら喜びを与えるものにほかならない。ここでは、ある特別な情動的反応をもたらす能力の観点から、美的価値を持つことが分析されている。 いわゆる美的快楽主義はこの筆頭なわけだが、能力による価値の分析にはいろいろとしんどい点がある。とりわけ、どうやって価値の客観性を担保するのかが問題となる。ワーグナーの美しい楽曲は快楽を与えるとは言うが、クラシックに親しんでいない私にはあんなのちんぷんかんぷんなだけで、特別な快楽は感じられない。私だけでなく多くの人がそうなのだとしたら、なぜワーグナーの楽曲には美的価値があるなどと言えるのか。 快楽主