『人口論』は、イギリスの経済学者、ロバート・マルサス(1766〜1834)による著作だ。1798年に発表された。 本書でマルサスは、人口と食糧に関する一般的な法則を示し、それに基づく議論を行っている。洞察の基本的なポイントは、私たち人間の性質上、人口は、食糧が増加するペースを遥かに上回る形で増加せざるをえないというものである。このことをマルサスは、数学の等差数列と等比数列の違いを引き合いに出して論じており、これは『人口論』のハイライトをなすものとしてよく知られている。 『人口論』におけるマルサスの記述は、現代の私たちからすると、なかなかに気分が暗くなるたぐいのものだ。そこに見られる「救いのなさ」が、世界に対する私たちの感受性にうまくフィットするために、マルサスの名は現代でも生きていると言うことができるかもしれない。だがマルサスに対して、ニーチェ的な意味での禁欲主義的僧侶ばりに、将来の見通し