ジョセフ・スティグリッツ氏 1943年米国生まれ。米アマースト大学卒、67年米マサチューセッツ工科大学にて経済博士号取得。95~97年クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長、1997~2000年世界銀行のチーフエコノミスト。2001年にノーベル経済学賞受賞。現在は米コロンビア大学経済学部教授。2011年に米誌「タイム」の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれる。『世界の99%を貧困にする経済』など著書は多い。 米国経済はようやく、ジョージ・W・ブッシュ政権末期に勃発した金融危機から立ち直る兆しを見せている。米国金融システムの内部崩壊とも言えるこの危機の衝撃波は、全世界に及んだ。 立ち直りといっても、決して力強い回復ではない。せいぜい、危機が起こらなかったと想定した場合の経済と、現状との差が拡大しなくなったという程度だ。その差は縮小しているとしても、ペースは緩慢だ。危機が残した傷跡は