小野:私が「不況の経済学」のアイデアを思いついたのは、1980年代の終わりから90年代初めの頃でした。その時はまだ日本は全く不況ではありませんでした。しかし、自分なりにいろいろと分析してみると、ずっと不況が続いて抜け出せないという恐ろしい理論的可能性が出てきました。それに、そのような場合に必要とされる政策も、それまで言われてきたものとは全く違うことが分かってきました。 自分でも驚いて、そういう話を色々な人にした時、「間違っている」とか「理論的にはそうでも、現実にはデフレなんて考えられない」と言われましたね。私自身も含め、当時の人たちにとっては、それまでの日本経済でデフレが続いた経験などなかったわけですから、無理もないですね。 92年に初めて理論書にまとめて、その中で、ひょっとして日本はそういう長期不況の入り口に立っているのかもしれない、ということを書きました。もう、ドキドキでした。だって、