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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (2)

  • だって他人だもん - 傘をひらいて、空を

    上司がビールを注文した。わたしは咄嗟に目を伏せ、その目を左右に泳がせた。隣の後輩とがっちり目が合った。彼もまた目を伏せてそれを泳がせていたのである。 今日は会社の近くで飲んでいた。わたしは様子を見て一次会でおいとました。駅に向かって歩き出すと、先ほど目があった後輩が追いついてきた。 彼は言った。あの人、飲むんすね。わたしも言った。飲むんだね。びっくりしたわ。 上司は先月、会議中に倒れた。発見が遅れたら死んでもおかしくなかったそうだ。人があとからそう言っていた。人がいるところで倒れたのがよかった、というのもなんだが、しかしよかったのだ、迅速に病院に運ばれて、死なずに済んで、すぐに会社に出てくるほど回復したのだから。 この上司の不摂生は有名だった。今どき珍しいくらいよく飲む。翌日が平日でも終電を超えて飲む。短めの二次会までは普通の飲み会である。最初からよく飲む人だが、その後は飲み方がより激し

    だって他人だもん - 傘をひらいて、空を
  • わたしの弟はワクチンを打たない - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。最初の通達から一年あまり、何度目かの通達のさなか、疫病のワクチンが提供されはじめた。それで全員が打つかといえば、そうではない。わたしの弟は打たないという。そして、わたしはそれを責めることができない。 弟は東京で一人暮らしをして、アルバイトで生計を立てている。今日働かなければ来月の家賃があやうい。運も悪かったし、弟の思慮が足りないところもあったと思うのだけれど、とりあえず自分で生活はできているのだし、人に大きな迷惑をかけているわけでもなし、責められるようなことではない。 わたしはそう思っているのだが、両親は「恥だ」と思っている。自分たちの助言をふいにして大学進学をせず、夢みたいなことを言っておかしな企業に就職してすぐに辞めてその日暮らしをしている、そんな浅はかな息子は心配するのも癪だと、そういうふうに思っている。 そうはい

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