理系の学者とちがって これはあるマンガ家さんに教えてもらったことなのですが、漫画家は理系の学者の対極でいられることを、最大限活用しないとつまらない、と言っていました。つまり、「何かが事実であると証明しなくても、読者を一瞬でも信じさせられれば、マンガは成立する」ということでした。 私はマルコム・グラッドウェルの文章に引き込まれるときにも、マンガを読んでいるような魅力を感じさせられます。ときに展開が強引なのですが、いつしかすっかり「だまされて」しまうのです。 確かに漫画家でなくても、物書きはよくこれをやります。「理系の学者とちがって」というのは、なるほどと思います。 たとえば本書のタイトルともなっている「失敗の技術」ですが、心理学的に「緊張しすぎて固くなる」ことと「パニックに陥る」ことを対置している点は、「まあそういえなくもないか」といった程度の話です。が、文章の展開で楽しまされてしまう。 そ