怖い話と仏教に関するonboumaruのブックマーク (31)

  • 仏教説話の怖い話より 「朽ちても朽ちぬ赤い花」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 都が奈良にあった頃の話でございます。 大安寺に弁西ト申す僧がございまして。 この者は白堂(びゃくどう)を生業トしておりましたが。 白堂トハなにかト申しますト。 欲深き民百姓どもがお寺にやってまいりまして。 あれやこれやト願い事を口にいたしますが。 その願いを仏に取り次いでやる者のことを申すそうで。 「子宝に恵まれとうございます」 「病身の母がどうか回復いたしますよう」 「縁結びをどうかひとつ」 ナドと、好き勝手なことを口々に申しますが。 弁西は嫌がる気色は微塵も見せず。 そのすべてを漏らさず書き留めてやり。 一つ一つを民に代わって丁寧に。 御仏(みほとけ)へ奏上いたします。 中には己のかつて犯した罪業の。 お目こぼしを求めに来る輩もある。 「実はむかし、朋輩を手に掛けたことがございます」 「隣の家の倅を人買いに売り渡しました」 「米蔵に盗みに入ったのは私でございます

    仏教説話の怖い話より 「朽ちても朽ちぬ赤い花」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/12/20
    「日本霊異記」より
  • 鬼女の乳を吸う | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 都が奈良にあったころの話でございます。 陽は山の端に傾き入り。 群青の闇が押し寄せる中。 墨を引いたように続く一道を。 ぽつぽつ歩く人影がひとつ。 これは名を寂林(じゃくりん)ト申す旅の僧。 まだ三十路にも手の届かぬ若い聖でございます。 十六年前に故郷を出て以来。 諸国行脚の修行の最中で。 僧にもかつて愛しい母がおりましたが。 その母が不慮の死を遂げましたのを機に。 母への、土地への、根深い執着を断たんがため。 一念発起、国を捨てたのでございます。 さて、ここは大和国は斑鳩の。 寂林法師のその生まれ故郷。 長年の修行は心を堅固にし。 もはや、母へも国へも何ら想いはございません。 里外れの一道に。 風がひゅうひゅう吹きすさぶ。 草木がさらさらトなびきます。 ト、その時、行く手の藪の中に。 怪しき人影が見えました。 前かがみに両手を膝へ突き。 ムチムチと肉付きの良い

    鬼女の乳を吸う | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/06/04
    「日本霊異記」より
  • 九十九の指と一つの首 指鬘外道 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 天竺の話でございます。 舎衛国(しゃえいこく)に、さる高名な婆羅門(バラモン)がおりました。 婆羅門ト申すは、かの国古来の祭祀者でございまして。 かの国では人は生まれながらに四つの階層に分かれておりますが。 その最上位が、この婆羅門と呼ばれる者たちでございます。 王侯貴族でさえ、その下位に甘んじているトいう。 もっとも、釈尊は婆羅門ナドどこ吹く風でございましたので。 仏家ではこれを外道(げどう)ト称します。 この高名な婆羅門は、三経に通じ五典を究めた人物で。 国の政事から種々様々な学問に至るまで。 この者に学ぶ者は実に五百人を数えておりました。 さて、この婆羅門には寵愛する優れた弟子がおりまして。 一名を鴦掘摩(おうくつま)ト申しましたが。 かの国の言葉では「アングリマーラ」ト発します。 何だか、ボンヤリと間の抜けたような名前でございますが。 その意味するところは「

    九十九の指と一つの首 指鬘外道 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/03/18
    仏典「仏説鴦掘摩経」より。
  • 五色の鹿 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 信濃の国の山あいに。 猟師がひとり住まっておりまして。 この者はすこぶる変わり者でございます。 世の人々と交わろうトいたしません。 人嫌いかト申すトそうではない。 浮世を疎んでいるわけでもない。 ただ、生来の無口にかまけているうちに。 年経てしまったのがそもそもの始まりで。 朝は早くから山へ入り。 猪や鹿を待ち伏せますが。 そう常に獲物にありつけるわけではございません。 手ぶらで山を降りる日が続きますト。 律儀に毎夕、家へト帰っていくことが。 徐々に馬鹿馬鹿しくもなりまして。 どうせ、親類縁者もございません。 近所に住む者も多くはない。 親しい者ナドもとよりない。 麓にあった住処は年々山奥へ移っていく。 山に起き伏しし。 山を彷徨い。 獣を追い求め。 獣に焦がれる日々でございます。 こうして、三十路を越した時分には。 すっかり世捨て人のご

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    onboumaru 2017/08/20
    「宇治拾遺物語」より
  • 仏教説話の怖い話 「母は蛭子を淵に捨てよ」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 我が日のには八百万(やおよろず)の神々がましますト申しますが。 みとのまぐわい(美斗能麻具波比)によって、この神々を産みたもうたのは。 伊邪那岐(いざなぎ)、伊邪那美(いざなみ)の二柱の男女神でございまして。 その第一に生まれた御子は、名を蛭子(ひるこ)ト申します。 これは「ヒルのごとく悪しきもの」トいうような意味だそうでございますが。 コトを始めるのに、女の方から声を掛けたのがいけなかったとかで。 御子は三年経っても足腰が立たなかったト申します。 哀れ、不具の子は葦舟に乗せられ、水に流されてしまいました。 これが我が朝の水子の初めでございます。 さて、お話は都が奈良にあった頃のこと。 難波津にとんでもない女がございました。 何がとんでもないかト申しますト。 この女はとにかく人からよく物を借りる。 そればかりなら誰も不満は申しませんが。 よほど人間が横柄に出来てい

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    onboumaru 2017/04/20
    日本霊異記より
  • 月蝕む夜に鞭打つ女 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 うら寂しい夜の通りを。 男がひとり歩いている。 年の頃なら三十ばかり。 背丈はスッと伸びるように高く。 頬の髭は少し赤茶けている。 侍格好の逞しき男児でございます。 「気味の悪い晩だ」 ト、男がふと嘆いたのも無理はない。 その視線の先。 中空に赤銅色の月が浮かんでいる。 雲一つない闇夜に浮かびあがる。 鉄塊がくすぶったような色の丸い月。 輪郭に白い光を僅かに残し。 徐々に闇に蝕まれていく。 今宵はいわゆる月蝕でございます。 「ええいッ」 男はこの何やら不吉らしい気分を振り払うように。 肩をブルブルッと震わせると、力強く歩を進めていった。 ト――。 「チッチッ、チッチッ」 どこからか、鼠でも鳴くような。 イヤ、人が舌でも鳴らすよな。 そんな妙な音が聞こえてくる。 ふと見るト、通りに面した家の半蔀(はじとみ)の中から。 白く艶めかしい腕がニュ

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    onboumaru 2017/03/05
    「今昔物語集」より
  • 三尺の翁が顔を撫でる | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 ただいま、徳川様の二条城が鎮座する地には。 もと、冷泉院(れいぜいいん)ト申す後院がございました。 後院ト申すは、上皇の御所でございます。 つまり、天皇の地位を退いた後の、終の棲家でございますナ。 さて、この冷泉院でございますが。 もともとは名を冷然院ト申しました。 ところが、度重なる火災のために。 何度も消失いたしましたので。 「然」が「燃」に通じるトして。 「泉」の字に改めたのでございます。 この冷泉院には、文字通りト申しましょうか。 泉ならぬ池がございました。 延喜年間に京の町の井戸が枯れました際には。 院を開け放ち、この池の水を誰にでも自由に汲ませたという。 陽成上皇がお隠れになった後。 この冷泉院の寝殿は、一条へ移されまして。 跡地はすべて町家となる。 池の周りにも人が住むようになりました。 さて、ある夏の夕暮れ時でございます。

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    onboumaru 2017/02/15
    「今昔物語集」より
  • 蘭陵王の婿 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 北斉の蘭陵武王は、武勇と悲劇の名将でございます。 数々の武功を立てながら、かえって疎まれてしまいまして。 最期は時の皇帝により自害に追い込まれたという。 我が朝で喩えるなら、さしずめ日武尊命といったところでございましょう。 この蘭陵王でございますが。 実は文字通り別の顔を持っている。 ト、申しますのは。 世に比類なき美声と美貌の持ち主であったため。 配下の兵士たちがついうっとりとしてしまう。 また、敵からは軟弱者ト思われて見くびられる。 そこで考えたのが、仮面を付けて出陣することでございました。 その仮面というのがまた凄まじい。 野獣とも鬼神ともつかぬ形相で敵を威圧する。 蘭陵王がこの面を被って敵の軍勢をかいくぐり。 見事帰城した時には、味方の兵すら恐れ慄いたト申します。 さて、お話は朝の平安京に舞い戻りまして。 都の一隅に、ある若い

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    onboumaru 2017/02/06
    「今昔物語集」より
  • 阿弥陀の聖 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 さる国の山中をひとり行く僧形の者がございました。 鹿の角を付けた杖を突き、鉦を叩いて諸国を廻る。 方々で阿弥陀如来の願を説いて歩きます。 世にいう念仏聖(ひじり)でございますナ。 さて、この壮年の聖の少し先を、旅の荷物を背負った男がひとり。 少し歩いては振り返り、少し歩いてはこちらを振り返りしております。 「さて、あの男はどうしてこちらをちらほら窺っているのであろうか」 ト、聖も奇妙に思し召さるる。 人気(ひとけ)もない森の中の一道でございます。 後ろをしきりに気にしているということは。 とりもなおさず、聖の存在を気にしているのに違いない。 「あの者も阿弥陀仏の救いを求めているのであろう」 聖はそう合点いたしまして。 そのうち追いつくであろう。 その時は求めに応じてやろう。 ト、考えた。 やがて道は坂に差し掛かる。 その坂を登りつめた

    阿弥陀の聖 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/01/25
    「今昔物語集」より
  • 猿の恩知らず | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 筑紫国のとある地に、貧しい女が暮らしておりました。 海近くに住んでおりましたので、いつも浜に出ておりました。 ある日、女は二歳の子を背負いまして。 隣の女とともに磯へ出て、貝を拾っておりましたが。 途中、しばし岩の上に子を下ろし。 上の子に守りをさせておりました。 しばらくして、ふと辺りを見渡すト。 山から降りてきた猿が、浜辺で佇んでいるのが見えた。 「ごらんよ。魚を獲ろうとしているんだろうね。見に行こうか」 そう言って女ふたりが近づいていきますト。 猿は怯えながらも、どうしたことか逃げずにいる。 辛そうな顔をして、逃げるに逃げられないといった体でございます。 何をしているのだろうかト、しばし見守っておりますト。 その謎がふたりにもようやく解けました。 溝貝という貝の大物が、口を開けていたところへ。 この猿がおそらくは取っておうとしたの

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    onboumaru 2017/01/15
    「今昔物語集」より
  • 橋の上の女童鬼 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 近江国の国の守の館に。 勇み肌の若い衆が幾人も雇われておりましたが。 ある夕暮れ時のこと。 この者たちが大勢寄り集まりまして。 ある者どもは、女や喧嘩の話で盛り上がる。 ある者どもは、碁や双六に熱中する。 ある者どもは、酒を浴び肴をらっておりました。 その時、一座のある者がふと、あることを思い出しまして。 「そう言えば、この近くにある安義橋(あきのはし)のことだが」 ト、言いかけますト。 たちまち若人たちが振り返り。 「おお、そうだ。そのことだ」 ト、ざわつき始める。 「昔は往来も賑やかだったそうだが、今では誰も渡ろうとしない」 「そうだ。生きて向こう岸まで渡れないと言うではないか」 「あの橋には鬼が棲みついていると、もっぱらの評判だからな」 すると、それを耳にした出しゃばりの男が一人。 にわかに立ち上がると、よせばいいのに見栄を張る。

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    onboumaru 2016/12/07
    「今昔物語集」より
  • しし鍋の晩に弔いが出る | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 西国から京へ上らんとする、若い僧がございました。 何をそんなに急ぎましたのか。 昼もなく夜もなく歩き続けまして。 やがて播磨国は印南野(いなみの)ト申す地に差し掛かりました。 今日も今日とて日が暮れる。 さすがにそろそろ休まねばト。 僧はどこかの家に一晩の宿を求めることにした。 とは言え、あたりは見渡す限りの野原でございます。 人家の灯らしきものがどこにも見当たらない。 月明かりを頼りに歩き続けますト。 遠い小山の麓に小屋らしきものが見えました。 取りあえず寝泊まりさえできればト。 僧は小屋に向かって歩いて行く。 ト、幸いなことに人が中にいる様子でございます。 「旅の僧でございます。一晩の宿をお貸しくだされ」 しばらくして中からのっそりと出てまいりましたのは。 一人の痩せぎすの老人で。 いかにも好々爺らしい表情で出迎えますト。 僧を小屋の

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    onboumaru 2016/11/20
    「今昔物語集」より
  • 人知れず美しい婿 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 我々関東者にとって英雄と申しますト。 一も二もなく、平将門公でございますナ。 何故かト問うのは野暮というものでご... さて、その頃、とある集落に長者が一人おりまして。 この者には、美しい娘が一人おりました。 あまりの美しさに、幼い頃から手塩にかけて育てられましたが。 年頃になり、そろそろ婿を取らねばということになった。 「こんなに美しく育った娘ですもの。婿を取るにも、天下一の美男子でなければなりません」 母が常日頃、そう言って譲らないものですから。 これまで幾度、縁談がお流れになったことか分かりません。 当人は幼い頃から箱入り娘でございますから。 何事もみな、親の言いなりでございます。 ト、そんなある日のこと。 集落に妙な噂が立つようになった。 なんでも、都から下ってきた旅の一行が、この集落を通って行く予定だとかで。 その主人たる都人が、これが天下に二人とない美男

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    onboumaru 2016/11/13
    「宇治拾遺物語」より
  • 三人尼と踊り茸 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 ある冬の初めのこと。 山に三人の木樵が入っていきました。 白髪の年長者、古之尉(ふるのじょう)。 壮年の年中者、寅麻呂(とらまろ)。 そして今日が初めての山入りとなる、和賀彦(わかひこ)の三人でございます。 木樵にとって、山へ初めて入ることとは。 大人として周りから認められることでもございます。 山には山の掟がございますから。 大人になった以上、それを守らなければなりません。 この日のために、和賀彦は。 七日七晩の精進潔斎をして臨みました。 心身ともに清浄でなければ。 山の神の怒りを買い、妖魔に襲われるト。 古之尉から教えられたからでございます。 和賀彦は生来、生真面目で臆病者でございますので。 とにかく、この七日間が気が気でございませんでした。 体の垢ならいかようにも洗い落とせますが。 心の垢は落ちたかどうだか、己では測りようがございま

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    onboumaru 2016/10/31
    「今昔物語集」より
  • 瀬田の唐橋で渡された箱 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 美濃国の生津という地に、紀遠助(きの とおすけ)ト申す者がございまして。 とある縁から、京東三条の関白殿の屋敷に長年勤めておりましたが。 ついに暇をいただき、美濃国へ帰ることになりました。 その帰路に通り掛かったのが、名橋、瀬田の唐橋で。 これはヤマトタケルノミコトの父、景行天皇の御代に架けられたという。 由緒正しき古橋でございます。 さて、遠助が従者とともに馬でこの橋に差し掛かりました時。 ふと見ますト、橋の上に女が一人立っている。 衣の褄を取って、ただぼんやりとしております。 夜明け前。 空がようやく白み始めた頃。 瀬田川から立ち上った朝もやが。 橋を白く覆っている。 遠助は、チョット不気味に思いながらも。 知らぬ顔をして通り過ぎようとした、その時に。 顔も合わせず、ただ固まったように立っていた、その女が。 不意に、首をこちらに回して

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    onboumaru 2016/10/18
    今昔物語集より
  • 阿闍世王と釈尊 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 天竺の話でございます。 成道して仏となられた釈尊の弟子に、提婆達多(だいばだった)という奸物がおりました。 この者は多聞第一として知られた高弟、阿難(あなん)の兄でございます。 ふたりとも、元をただせば釈尊の従弟でございますが。 同じ従弟でも、提婆達多と阿難では、陰と陽ほどの違いがある。 提婆達多という男は、生きながらにして無間地獄に堕ちたと伝えられております。 単に釈尊の教えに反したからというのではございません。 釈尊を殺害することによって自らが仏となろうという、誤った考えを抱いたからで。 後に唐の三蔵法師玄奘が天竺を旅しましたときに。 提婆達多が地獄に堕ちたという、その穴がまだ遺っていたとか申します。 さて、釈尊の元を離れた提婆達多でございますが。 摩竭陀国(まがだこく)は王舎城の阿闍世(あじゃせ)王子に取り入りまして。 その側近のような立場に収まっておりました

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    onboumaru 2016/10/02
    今昔物語集ほかより
  • 毘瑠璃王と釈迦の一族 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 天竺の話でございます。 お釈迦様が悟りを開かれて間もないころのこと。 舎衛国(しゃえいこく)の波斯匿王(はしのくおう)が、これを耳聡く聞きつけまして。 「迦毘羅衛国(かぴらえいこく)は小国ながら、その一族は釈迦仏という仏を輩出した貴種である。釈迦族から妃を一人求めることにしよう」 ト、大臣に命じて釈迦族に通達させました。 釈迦族の者たちはこれを伝え聞きまして。 王や主だった大臣が集まって、討議をする。 釈迦族は釈迦族で、国は小国ながら誇り高い種族でございまして。 隣国の舎衛国は確かに大国には違いございませんが。 血統の上では、自身ら釈迦族が遥かに上と信じて疑っておりません。 舎衛国の王風情に、姫をくれてやる訳にはいかないと考えた。 しかし、一方で舎衛国は確かに大国でございます。 かてて加えて、波斯匿王は悪名高き暴君でもある。 もし、縁談を拒否して攻め込まれれば、小国

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    onboumaru 2016/09/19
    「今昔物語集」より
  • 犬が狐を殺しに来る | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 天竺の話でございます。 お釈迦様が悟りを開かれて間もないころのこと。 舎衛国(しゃえいこく)の波斯匿王(はしのくお... 時に、憎悪というものは、周囲の理解を超えることがございます。 都が奈良にあった頃のこと。 興福寺の僧に、永興禅師ト申す高僧がございました。 当時は紀伊国の熊野に住まい、修行をしておりました。 その頃、近在の村に病の者が一人おりまして。 親族が両手をこすり合わせながら、禅師の住む庵に連れてまいりました。 禅師は快くこれを引き受けまして、祈祷をする。 咒文を唱えますト、たちまちに病は癒えていきました。 病人も親族も、地に額をこすりつけて、感謝する。 そうして立ち去ったかト思うト、いくらも経たぬうちにまた戻ってきた。 禅師はその様子を見て、訝しく思いました。 直してやったはずの病人が、先ほど来た時と同じように苦しんでいる。 「禅師様ならもしやと思い、こ

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    onboumaru 2016/09/12
    「日本霊異記」より
  • 鬼の手 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 とある地に、鹿や猪の猟を生業とする兄弟がございました。 いつも二人で山に入り、「待ち」ト呼ばれる手法で猟を行っておりました。 離れた二の高い木の股に、長く頑丈な横木を渡しまして。 その上に二人が並んで立ち、下を通る獲物を弓で狙うというもので。 九月も下旬となったある晩のこと。 見上げれば夜空に月はなく、見下ろせば眼下に闇が広がっている。 静まり返った森のなかで、兄弟は鹿のやって来る音に耳を澄ましておりました。 二人を長い静寂が包んでいる。 「おかしい――」 ト、まず兄がそっとつぶやいた。 「――今夜に限って、獲物が来ない」 弟はそれを聞いて、一つ息をつきますト。 「母者人が一人寂しく待っております。空手で帰るわけにはまいりますまい――」 ト、深い憂いを湛えた声音で言いました。 兄は何も返さない。 再び、静寂が二人の間に流れます。 鹿の忍

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    onboumaru 2016/08/29
    「今昔物語集」より
  • 近江の女のいきすだま | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 ある時、京から美濃、さらに尾張へ向かおうとしている下臈がおりました。 下臈――すなわち、当今で言う町人、あるいは下男のようなものでございますナ。 元々は明け方に京を出るつもりでございましたが。 どうしたことか、何やら胸騒ぎがして落ち着きませんので。 夜のうちに家を発っていきました。 夜寒の中、息を白くしながら。 とある辻までやってきますト。 大路に人の気配がある。 見るト、青みがかった衣を着た女が、一人で立っておりました。 この夜更けですから、まさか一人ではあるまい。 同行の男がどこか近くにいるのだろう、ト思いまして。 下臈も何気なく脇を通りすぎようトした。 ト、不意に女が下臈に声を掛ける。 「あの、どちらへ参られますか――」 その声が何か妙に消え入るような調子でございましたので。 下臈は、ふと女のほうを振り返りますト。 身なりはそれなり

    近江の女のいきすだま | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/10
    「今昔物語」より